下には三花さんがいる。
さっき宿泊許可を取る時に「なんもしない」って約束した。

またもや「ちょっとキスするだけ」から始まったそれは、前回と全く同じ道筋をたどることとなる。
徐々に吹き飛んでゆく理性に、服の中に侵入しはじめる晴の手のひらーーー

「晴、痛い!!」
「っあーー、ゴメン!!」

やっぱり勢い余ってガツガツしちゃう。
だから晴の場合は「ぞぞぞ」ってくるよりも先に「いったあ!」がくる。
おそらく晴のこの手つきは童貞丸出し。熟練のおじさまのそれとは天と地ほどの差があった。

だけど。

どんなに身体がぞぞぞって疼いても、堤さんにはひとっつも心が動かなかった。触られれば触られるほど、頭の芯が冷えていくような気がして。

どーしても、晴でなきゃダメだった。
晴にさわられる時だけなのだ。
胸が潰れそうなほどドキドキするのも。嬉しくて、幸せで、息が詰まりそうになるのも。全部全部、晴にさわられる時だけ。
私は晴の手しか受けつけられない。

「やっぱり晴でなきゃヤだ。晴が好き」
「オ、オレも一花が好き・・・・
・・・・なだけに、チョットもーダメ!!」

「うっ」ってなって、またもやどこかへと消えた晴。
だけど今夜はちゃーんと戻ってきてくれた。
「もう絶対に、どっこも触らない」って言って私を抱えて目を閉じたと思ったら、晴はそのまま一気に眠りに落ちた。

あったかい腕の中で、晴の寝息と胸の音に耳をすます。
とくとくと鳴り続ける小さな音を聞きながら、私はひとり静かに腹を括った。

決めた。私、晴のそばにいよう。
こうなったら意地でもここに居座ってやる。

間違ってるかもしれない、とは今でも思う。
だけどもういい。それも丸ごと背負っていこう。

ちゃっかりと開き直った私は、愛人計画が未遂に終わったことを心から感謝した。

泣きながら眠ることになると思っていた夜は一変。
私は幸せに包まれながら眠りについたのである。