お風呂を終えてホカホカと私の部屋に現れた晴は、机の上に開きっぱなしになっていた私の財産ノートとペンを持ってお布団にもぐりこみ、少しだけ身を乗り出して畳の上にノートをひろげた。
そこへさらさらと晴の通帳残高を書き込んで、ぱたんとノートを閉じる。

「これでよし。一花、電気消して」

真っ暗な部屋の、お布団の中で晴がシッカリと私を抱きしめる。
けれども頭上から落ちてきたのはちょっとイジケた機嫌の悪い声だった。

「あいつに胸触られたんだって?」

「!!!」

晴はあの部屋で起きたことを事細かに知っていた。
堤さんがしゃべったらしいのだ。丸々全部、アホみたいに正直に。
だから私たちの間にほとんど何もなかったことは晴もわかってるはず。だけど、それでも心配な晴がじっとりとした不安を纏わせて、念入りに確認をしてくる。

「キスした?」
「してないよ」
「ホントに?? 絶対?? チョコッとも!?」
「してないってば」
「オレに気いつかって黙ってたりしたら許さねーからな!!」

「嘘じゃないよ、ホントにしてない」

カミサマに誓えんのか!! ってしつこく騒ぐ晴に「誓える。命かけてもいい」って答えながら私は密かに幸せを噛みしめていた。

こうやってまた晴のそばに戻ってこれて、いつも通りのふたりでいられる。
これ以上の幸せなんてない気がした。