晴に手をひかれて、もう一度夜の街に出た。
北口から例のホテルまでは徒歩5分ってところ。

私の足取りは軽かった。だって晴がいる。
隣を歩く彼の横顔を何度も確認しては幸せをひしひしと噛みしめていた私。
しかし。ホテルのロビーに入った途端、私の足はすくみあがってちっとも動かなくなってしまったのである。

堤さんに会うのも、あの部屋に入るのもどうしても嫌で、私はロビーのど真ん中で晴に駄々をこねた。
「やっぱヤだ。行きたくない。バッグなんかいいからもう帰ろ?」
「いーわけねえ。財布とか入ってんだろ?」
「そーだけど、でもヤだ!! 帰りたい!!」
だけど、どんだけヤだって言っても晴は頑として受けつけてくれない。
一花が会えないならオレが会ってくるって言う晴に渋々部屋番号を教えて送り出し、私はロビーのソファにひとり身体を沈めた。

あーあ。

結局晴に尻ぬぐいさせてる。
何してんだ、私は。

晴がいるとついつい甘えちゃう。
ダメだな、こんなんじゃ・・って思いながらも、瞼が落ちてくのを止められない。
気がついたら私はソファに沈んでグースカ寝ちゃってて、私のバッグをぶらさげて戻ってきた晴に頭をはたかれるまで、私は完全に意識を飛ばしていたのである。

「帰るぞ。チンタラしてたら終電乗れなくなる!」