「い・・いやチョット・・言ってる意味がわからないんだけど・・・・ねえ今、別れないって言った??」
「ウン」
「??? う、嘘・・私の聞き間違い・・???」
ますますアタマが混乱してブツブツと独り言をつぶやきつつ、私は更に質問を重ねた。
「彼女がいきなりヨソのおっさんの愛人やり始めたら別れるよね、フツー」
「いーや。別れない」

「?????」

私はしばし、晴の放った『別れない』を反芻しつつポカンと呆けた。
こんなの全く予想外だったのだ。
だって私が堤さんのモノになっちゃえば、間違いなく私たちは終わるって思ってた。晴はこの街を出て遥さんのところへ行くはずだって。

「ーーーゴメン、やっぱ意味わかんない。まさか私が堤さんの愛人になっても別れないってゆーの?」
「うん、別れない」
「今から抱かれてきても?」
「うん」

「ーーーーーなんで!??」

ずーっとしゃがみこんでた晴が立ち上がって私の隣にすとんと座る。大事に大事に私の手を握りしめたまま。

「おまえさあ、自分があのおっさんのモノになったらオレが母さんとこ行くって思ってたんだろ?」
それをフンて鼻で笑いながら晴が言うのだ。
「オレが意地でもここに留まるって可能性も、ちゃんと考えた?」って。

んなワケない。
そんなの考えなかった。

「愛人っていつまでやんの?」
「高校卒業するまで・・」
「じゃあ、それまで待ってる。オマエのそばで」

「なっ・・・なにそれーーーーー!??」