私の正面に仁王立ちした晴は、それはもう禍々しいほどの恐ろしさだった。

「おまえこんなとこでなにしてんの?」

静かだが、色々抑えてガマンしてます、ってのが丸わかりの低い声。
その迫力に震えながら、私は小さな声で返事をした。

「え・・えと・・チョット外出・・」
「へーー」

手ブラで?と晴が私の手元を顎でしゃくる。
膝の上でもじもじと所在なさげな私の両手に、絶対零度の視線が突き刺さった。

「バッグ持って出たんだろ? ドコやったんだよ。なんで持ってねえの?」
「バッグはね・・あの、その・・ええっとーーーなくしたの・・」
「どこで? なんで?」

「・・・」

堤さんの部屋に置いてきたなんて言ったら殺されそう。
そしたら、ビビって俯く私に晴が叫んだのだ。

「ホテルに忘れてきたんだろ!!」って。