「一花ちゃん、何食べたい?」って堤さんがメニューを見せてくれるのだが、こんなお店入ったことないからよくわからない。
注文は全部おまかせして、その後は堤さんの話を聞きながらお料理が出てくるのをボンヤリと待った。
だらだらと水ばっか飲んでる私に、堤さんが晴のことを聞いてくる。彼氏のことはよかったの、って。

「いいんです。もう別れちゃったし」
「じゃあ、僕は彼のこと気にしないでいい?」
「はい。全っ然大丈夫です」

すんごいお料理をご馳走になりながら、これから用意してもらえるアパートのことやお金の話をした。
聞いてみれば、やっぱり条件は悪くない。
坂川に小さなアパートを借りてくれるという堤さん。
私はそこで高校を卒業するまで養ってもらえる。

「生活費や学費のことも心配しないでね?」

お医者さんの堤さんは夜のシフトが不規則だから会うのは週に1、2回くらい。前もって連絡できると思うから、できれば堤さんの都合にあわせてもらいたい、って言われる。
「それでいいかな、一花ちゃん?」
「はい。大丈夫です」
まだ全然現実味なんてないけれど、いつかたしかな現実になるのだろうからシッカリと頷いておく。

それからママのことも少し。

「堤さんとママは、ホントの恋人同士だったんですか?]
「そうだよ]
「・・ちゃんとお互い好きだったの?」
「もちろん。僕は千花ちゃんが大好きだったし、千花ちゃんもそのはずだよ」

そう言って堤さんが微笑むんだけどーーー