ラーメンを食べた後は海に行った。
ここに来たばかりの時、しょっちゅう泣きに来てた海。
昼寝して、晴と釣りした海だ。

「あのへんに座ろ?」って晴を誘って港のコンクリのふちに腰かける。
しかし。残念ながら夜の海は私が期待したほど素敵なものではなかった。小さな灯りがすんごい遠くにぽちぽちと揺れるだけ。見て楽しいものなんか何もない。

「なあ、何しに来たわけ?? マックラなんだけど」
って言いながら、晴が恐る恐る足元に広がるドス黒い水面を眺める。
「ゴメン。もうちょっと夜景がキレイかなって思ってた」
「んじゃ帰ろーぜ。あんま遅いとおばちゃんが心配する」
「・・うん」

そうだった。
今日は三花さんが家にいる。
晴の言う通り、三花さんには心配かけたくない。

「行こ、一花」

隣でジャリって音がした。
晴の靴底がコンクリをこすった音だ。晴が膝を立てて立ち上がろうとしていることに気がついて、私は慌てた。

「嫌だ、まだ帰りたくない・・!!」
すでに中腰の晴にしがみついて懇願する。
「晴。キスして」
「ーーーエ??」
「ちょこっとだけでいから!」
再びすとんと隣に腰をおろした晴が、
「いきなりなに? 珍しくない?」
って首をひねる。

だよね。
だって私、恥ずかしいから普段はあんまりこういうお願いはしないのだ。

「どーしたんだよ、なんか変ーーー」
晴が全部言い終わる前に勝手に唇を塞いで続きを催促。
「お願い、キスしてよ」
「そりゃするけど。全然」
困惑気味の晴が宥めるように私の頬に手を伸ばす。
そおっと晴の顔が近づいてくる気配がして、私はドキドキと目を閉じた。
ちゅ、ちゅ、ってキスが落ちる。ふたつほど。

「ーーーん? あれ?? キスは?」
「しただろ、今」

「・・っえーーー!! あれだけ!? もう終わり??」
愕然とする私に晴が口を尖らせる。
「だって暗いつっても、ここ丸見えだぞ? こんなとこでイッパイは無理!」
「えええ。それを晴が言う!?」

視界100パーの新幹線で堂々と舌つっこんできたのは誰だ。
なんて勝手なヤツなんだ、納得がいかない!!・・と、私は震えた。
ちなみに、さっき自分が『ちょこっとだけでいいから』と言ったことはすでに頭にナイ。