真治さんのことが死ぬほど好きだったという遥さん。
晴を妊娠したことがわかった時は『思わぬ奇跡に舞い上がった』のだそう。
「だってあの頃、私のほかにも3人は女がいてさ。私なんかそのいっっちばん下のほうだったの。あんまり会ってももらえなかったし・・」
当時、隣県で女子大生やってた遥さんは、夏休みで実家に戻ってる時に妊娠してそのままB大を中退。

「びっ・・B大を中退いい!??」

ちなみにB大とは、この近辺じゃ他とはチョット偏差値の格の違う誰もが認めるエリート大である。県内有数の進学校である門高からだって、そう何人も入れるわけじゃない。
一方、真治さんはといえば、三花さん言うところの『港町高校最底辺のクズ』だったのである。
もちろん、男の価値が学歴やお金のあるなしだけで決まるとは思わないけれども。

だけどな。

そーは言っても・・・・と、私は言葉を失った。

遥さんは、自分がそんな男の4番目以下の女だってわかってた。
それなのに妊娠が判明した途端、速攻でB大を中退し、嬉々として真治さんのところに押しかけたってゆーんだからモノスゴイ。

「で、なんとか結婚にこぎつけた!」

フンと得意げに鼻を鳴らす遥さんに、うっすらと晴の顔が重なった。
『金も学歴もいらない。他のなによりも一花がほしーんだよ』って歯の浮くようなセリフをやたら真剣に囁かれたのはついこの間のこと。そして実際に、晴はその言葉通り金と学歴をドブに捨てようとしている。

「なんだろ・・たしかに晴と同じニオイがしマス・・」
「でしょう??」

真治さんと結婚した遥さんは、嬉しくて嬉しくて、そりゃあもう気合を入れて張り切ったのだという。なんとかして真治さんを振り向かせ、自分のもとに繋ぎとめるために。

「無茶苦茶尽くした。そーゆうのが苦にならないタイプだから」
「そ、そうなんですかあ・・」

だけど結局、真治さんが遥さんに振り向いてくれることはなかった。
真治さんは常に外の女を優先。結婚したらますます遥さんは後回しにされるようになってしまったのだ。だっていつでも会えるから。
そして、だんだんと心を擦り減らし鬱を発症してしまった遥さんは、最終的には両親に拉致られるようにして真治さんと離婚させられたのだという。