「最初はね、晴が一花ちゃんのこと泣かしてんじゃないかと思ってすっごく心配だったの」
「?? どーしてですか?」
「だって晴があんまり真ちゃんに似てたから・・」

遥さんの中では、晴の記憶は5歳でストップ。
遥さんの心に棲み続けていた晴は、あどけない小さな男の子のままだった。
それなのに。
あの可愛かった晴がタラシのお父さんと瓜二つの顔をして自分の目の前に立っている。その衝撃たるやーーー遥さんは腰を抜かしそうになるほどのショックを受けたのだという。

「でもね、話してるうちにすぐわかっちゃった。アレは真ちゃんじゃなくて、私にそっくり」
って言いながら、遥さんがなんとも言えない微妙~な表情を浮かべる。

「さっき英明さんが紅茶を出した時、一花ちゃんのカップに晴がお砂糖入れてたでしょう?」
「???」
「三花ちゃんちで紅茶をご馳走になった時もそうだった」
「・・・・あ」
言われてみればそう。いっつも晴がお砂糖入れてくれてる。

そうそう、それにあの日は・・と、遥さんが思い出し笑い。
「晴ったらふたつもカバン抱えて帰ってきてさ!」
「えっ、カバン・・??」
慌てて記憶をたどれば、たしかにそうだ。
あの時晴は通学カバンをふたつ、肩にひっかけていた。余分ないっこは、もちろん私のカバン。ちなみに私が下げていたのは、長ネギと入浴剤しか入っていないスッカスカのエコバッグひとつである。

「うっわあ、ホントだ。そうでした・・・・」

遥さんの指摘に青ざめつつ頭を抱えた。

ーーーわ、わたしって何様・・!?

こうやって色々並べられると、エラそうに晴をコキ使っていたような気がしてきていたたまれなくなる。
「ごっ・・ごめんなさい・・!!」
縮こまる私に遥さんがあっけらかんと微笑んだ。
「気にしないで。あれ、性格だから。あーゆうところが私にそっくり」