夏休みに学校の宿題で育てていたという晴人くんのホウセンカは青いプラスチックの鉢に植えられていた。
晴人くんが残り少ない赤いお花をぷちぷちとちぎり、私の手のひらに盛ってゆく。

「これ、ぜーんぶいちかちゃんにあげる」

その次は、持参したス〇ッチを私に見せながらのゲーム実況。そのうち彼は私のことなど忘れ去り、ただただゲームに没頭し始めた。
私は晴人くんの隣に座り込み、手のひらにホウセンカをのっけたまま、木漏れ日のさすお手入れの行き届いた美しい庭を眺めた。

なんていいおうち。んで、いい家族。
豊かで、あったかくて。思いやりにあふれてて。
ついつい、ふふふと笑いが漏れる。
ドン底住宅とは大違いじゃないか。

なのになのにーーー



本当に、晴からここを取り上げる・・・・?



ああ、胸が痛い。
膝にゴンとおでこをのっけて、私はガックリとうなだれた。

『これでいいのかわからない・・三花さん、これって正しいの?』

三花さんが『わからない』と言った答えを、私はいまだに探し続けている。