そういう話をしてれば、どうしたって晴自身のスペックの高さと高卒で学歴を終えることへの無念さみたいな部分に触れざるを得なくなる。
英明さんは本当にそのことを残念に思っているようで、「こっちに来なくてもいいから、進学のための資金援助だけでもさせてもらえない?」みたいな提案をして下さるのだが、それには晴がけして首を縦にふらなかった。

「大学には行きません。一花と一緒にいられなくなる」

結婚して家族になって、私のそばにいたい。
晴が繰り返すのはずうっと同じこの言葉。
すんごい嬉しい反面、罪悪感に圧し潰されそうにもなる。

「一花ちゃんは結婚のことどう考えてるの?」って英明さんに声をかけられた時、私は怖くて顔をあげることができなかった。
どうしよう、なんて言おうーーーぐっちゃぐちゃの頭の中がぐるぐると混乱する。

だけどその時、私の視界いっぱいに晴人くんの顔がうつりこんだのだ。
足元にしゃがみこんでこっちを見上げる男の子の暖かい手が、私の手をきゅっと握る。
「いちかちゃん、つまんないんでしょ? オレと遊ぶ??」
「え???」
「お花すき? オレのホウセンカ、みる??」
庭に行こう!!って言い始めた晴人くんが強引に私を立ち上がらせた。
「ええっっ、オイ、弟!! オレらは今大事な話をーーー」
「いちかちゃん、オレが遊んであげる!!」
晴の文句など耳に入らない彼は、私を連れて庭に飛び出した。