私たちの住んでいたアパートは、実はママの恋人が借りてくれてた部屋だった。相手はママがパートで働いてた病院の先生で、ママはその先生の愛人だった。
車を持ってないママが車の事故で死んだって聞いた時に、おかしいなとは思ったのだ。そのせいでママの存在が奥さんにバレ、芋づる式にアパートのこともバレてしまったらしい。

小さなお葬式を終えた後すぐにダンディで小綺麗なおじさまがうちにやってきて、私はそこではじめてママの内緒の恋人の存在と、このアパートを引き払わねばならなくなったことを知ったのだった。

「ごめんね、一花ちゃん」

初めて会うおじさまが寂しそうに笑う。
力にはなってあげられないけれど元気でやって、って。