改めてぐるりとリビングを見回してみて、私は小さく感嘆のため息をもらした。
なにもかも素敵ーーーだけど、なんたって一番はこれだ。
私はこっそりとお尻の横に視線を落とした。
上品で明るいブラウンの、とっても座り心地のいいソファ。こんな素敵なソファ、地元じゃ見たことない。
粗めに織られた生地の表面をそおっと撫でてみると、分厚くてシッカリとした感触が手のひらに心地いい。

「はあ、素敵・・」

私のつぶやきを拾った旦那様が嬉しそうに目を細める。
「前のがヘタっちゃって買い換えたばかりなんだ。遥ちゃんが選んだソファなんだよ。遥ちゃん、シュミがいいんだよねえ。へへへへ」

デレデレと『遥ちゃん』を連発するイイ歳のおじさまに驚いた私たちは、思わずぐるんと遥さんのほうへ顔を向けた。ところが、ニコニコとごく普通の顔をしている遥さんに何かを気にする様子など全くない。

ーーーなるほど、なるほど。

これが普通か。きっといつもこうなのだろう。
遥さんはここじゃ『遥ちゃん』なんだなあ~と納得して、私たちは一瞬でそれに馴染んだ。