その後もまだしばらく、私たちは「行け」「行かない」のやりとりを繰り返したのだが、実はその中で私は何度か首を捻ったのだ。

「ねえ、リッチになりたいって思わないの?」
だってこのひと、すんごく貧乏なんだから。もっとハングリーで、ギラギラしてたっていいはずなのだ。
「いい大学行って、いいトコに就職してさ。ガッポリ稼いでドン底住宅から這い上がりなよ」

ところが晴はそれをフンて鼻で笑って、プイと横を向く。
「金なんかほどほどあればいーんだよ。それよりオレは家族がほしいの! 何ベンも言ってんだろが!」

金より愛がいいらしい。
見た目がヤンキーだったわりに愛情深い晴の性格を思い出してウフフと笑っちゃう私に、晴がワナワナと怒りをたぎらせる。

「ああ、ムカつく。一花がまっったく平気そーなのが!!」