そばにあを

「・・・これ分かんない。」
「教科書98ページを読んで下さい」
「これはー?」
「・・・66ページ!」
「これ」
「211ページ!!」

声を荒げる私と拗ねる要。・・・完全なるデジャヴである。

「少しは自分で考えなよ。」
「そうだそうだ!神谷くんもっと言ってやって!」

参考書を片手に神谷くんが援護射撃。その横で千里は必死に教科書をめくっていた。期末テストへ向けて神谷くんの家で開かれた勉強会。今回のテストは2年生最後の総合テストだ。赤点をとるのは非常にまずい。・・・のだが。

「・・・どうしようもう無理。」
「千里、まだ勉強始めてから30分も経ってないからね。」
「いやもう無理だって進級できる気しない。」
「諦めるの早すぎだわ。寝るなよおい。」
「大体さあ、日本史なんて将来使わなくね?」
「要お前は開き直るな。」

シャーペンを放り出して寝転がる千里と、もはやペンを握る気すらない要。神谷くんと目があって、はあ、と2人同時に溜息をつく。今回のテスト、赤点が一教科だけならまだ許されるがそれ以上となると進級の危機となる。・・・つまり。

「ちょっと待って俺たすき掛けできないわ。」
「ねえねえ英語って何からやればいいの??」

「「・・・はあ。」」

化学と数学が壊滅的にできない要、そして全般的に勉強が苦手な千里は、現在非常に危ない状況にいるのだ。みんなで進級できるよう、テスト前に急遽開かれた勉強会はあまりに緊張感が無さすぎた。しっかりしなあんた達???

「・・・奈月ちゃんは数学得意だよね?」
「それなりには。」
「よし。じゃあ要に基礎の基礎だけ教えてあげて。俺は千里に英語叩き込むから。」
「よっしゃ任せて。」

別にすごくいい点数なんてとらなくてもいい。赤点を免れさえすればいいのだ。幸い私たちの通う高校はそこまで偏差値の高い学校ではないため、平均点はそこまで高くないだろう。だらけてやる気を出さない要に無理やりシャーペンを握らせる。

「とりあえず、この問題やって!」
「やってって言われてもできないし。」
「いいから!やってみなきゃ分からないでしょ!!」
「でも・・・」
「早くやれ!!!」

ペシッ、と持っていたノートで要の頭を叩けば、拗ねながらも問題に取り組み始めた。横を見れば千里も同じように神谷くんに怒られていた。・・・テストまではあと一週間もない。ここまできてもやる気を出さずに謎の自信を語っていた要を千里を逆に尊敬する。そんな勉強会を経て流石に焦りを感じたのか、要も千里も真剣に勉強に取り組み始めた。・・・といっても3日間だけだけど。もちろん私も気は抜けないので、要の面倒もみつつ自分の学習に励む。ちなみにテスト期間中の家事は鈴香さん達が気を利かせてお休みさせてくれた。

テスト返却日。そんな甲斐もあってか、まずまずの自分のテストの出来に一息ついて後ろの席の千里を振り返る、と。

「あら奈月さんテストの結果はどうでして?」
「何キャラだよそれ。」

振り向くのを待ってました、とばかりに得意げな顔の千里。・・・なんかむかつく。

「これみてくださいよ。これ。平均点余裕で超えちゃってますよははは!」
「はいはいよかったね。」
「まあこれが?これが私の実力ってやつ?」
「・・・。」

うざかったから一発デコピンを食らわせといた。痛っ、奈月容赦なさすぎ!!とおでこを押さえて騒ぐ千里をスルーする。要はどうだったんだろう、と気になって携帯を開けば、新着ラインが一件。差出人は要で。

【無事赤点回避!俺の実力にかかればこんなもんよ!】

同じような事言ってんじゃないよ、ばか。