「おはよ、奈月。」
「おはよう。」
がやがやと騒がしい教室の中。友人の千里と挨拶を交わす。
「もー、今日も要くんと登校?ほんとラブラブだね~」
「だからそんなんじゃないって!」
住んでる場所が同じなため、登下校はいつも一緒だ。
ただ周りにはその事を話してはおらず、自然と大きな勘違いが生まれていて。
「またまたー。要くん、先週も1年生泣かせてたんだから。」
「知らないよ。ていうか千里はいつもどこから情報仕入れてくるの・・」
「私をナメてもらっちゃ困るよ。」
千里はそう言ってからウインクをしてみせる。全然出来てないけどね。むしろまばたきだけどね。
・・・要はモテる。顔立ちも整っているし、なにより笑顔が素敵、らしい。
勉強はいまいちだが運動は得意で、女子に騒がれているのをよく見かける。
「彼女が普通の女子だったらいじめにでもあってる所だけど。」
そこで言葉を止めて千里は私の方を見る。
「それが奈月じゃ誰も文句も言えないよね。」
「はー、何言ってんの?ていうか付き合ってもないってば!」
「頭もいいし運動もできるし・・・むかつく~」
「褒めるか文句言うかどっちかにしてもらっていい!?」
よしよし、まあ落ち着け。と千里に頭を撫でられる。私は犬か。
千里とは仲が良くてとても良い友人なのだが、なんせ人の話を聞かない。
放課後、振動を感じてスマホを開けば新着メールが一件。差出人は、雨野さん。
【 単三電池 電球 卵 】
主語もなにもなく、書かれていたのはその3単語。雨野さんらしくて思わず吹き出してしまう。
「奈月ー。今日ドーナツ食べ行かない?」
「ごめん。雨野さんに買い物頼まれちゃって。」
「そっか、じゃまた今度ね!」
千里に手を振って帰り支度を始めれば、聞きなれた声がしてドアからひょこっと黒髪が跳ねる。
「かーえろ。」
「ちょっと待って。」
周りの視線を感じながらも、課題に必要な教科書だけ詰めて教室を出た。
「今日要たち体育バスケだったでしょ。」
「そー。なんで?見てた?」
「クラスの女子が騒いでた。」
その言葉にへー、と声を漏らした要。そして私の方を向いてにやにやと笑う。
「俺がシュート決めたところ見てた?」
「・・見てない。」
本当は見てたけど意地悪でそう答えれば、ちぇー、と子供のように口を尖らせた。
普通科だけでなく工業科も存在する私達の高校では、部活や生徒会で関わりがなければ、顔も名前も知らない生徒もたくさんいある。同級生でもだ。要は2組で私は7組。普段校内で接する機会はあまりなくて。
「そういえば、メール来てた?」
「誰から?」
「雨野さん。」
そう私が言うと要は思い出したように笑う。
「来てた。1人で爆笑しちゃったよ。」
そう言って私に雨野さんからのメールをみせてくる。内容は私に来たものと同じで、また笑ってしまった。
古びた商店街を抜け、路地裏へと入っていく。
錆びて傾いたカーブミラーのある交差点を右に曲がれば、見えてくるのが私たちの家だ。
学校から数十分歩けばたどり着くここ、葛木荘。お世辞にも綺麗とは言えず、最初見たときは「ここに人が住めるのか」と不安に思った程である。けれど、住んでみれば意外と快適だ。夏は暑いし冬は寒いが、それでもトイレは綺麗だし台所も自由に使える。何より皆との距離が近くて一緒に生活している感じが、私はとても好きである。
「ただいまー。」
帰宅は私たちが大体一番乗りだ。各自荷物を部屋に置いたら夕食の準備にとりかかる。
「要。炊飯器スイッチ押してもらっていい?」
「ん。」
皆の洗濯物を分けていた要にスイッチを押してもらう。
・・・5時過ぎに鈴香さんが帰宅して、7時頃に拓海さん。雨野さんは葛木荘の裏で小さな喫茶店を営んでおり、夕食はそっちに運ぶことになっている。
「おはよう。」
がやがやと騒がしい教室の中。友人の千里と挨拶を交わす。
「もー、今日も要くんと登校?ほんとラブラブだね~」
「だからそんなんじゃないって!」
住んでる場所が同じなため、登下校はいつも一緒だ。
ただ周りにはその事を話してはおらず、自然と大きな勘違いが生まれていて。
「またまたー。要くん、先週も1年生泣かせてたんだから。」
「知らないよ。ていうか千里はいつもどこから情報仕入れてくるの・・」
「私をナメてもらっちゃ困るよ。」
千里はそう言ってからウインクをしてみせる。全然出来てないけどね。むしろまばたきだけどね。
・・・要はモテる。顔立ちも整っているし、なにより笑顔が素敵、らしい。
勉強はいまいちだが運動は得意で、女子に騒がれているのをよく見かける。
「彼女が普通の女子だったらいじめにでもあってる所だけど。」
そこで言葉を止めて千里は私の方を見る。
「それが奈月じゃ誰も文句も言えないよね。」
「はー、何言ってんの?ていうか付き合ってもないってば!」
「頭もいいし運動もできるし・・・むかつく~」
「褒めるか文句言うかどっちかにしてもらっていい!?」
よしよし、まあ落ち着け。と千里に頭を撫でられる。私は犬か。
千里とは仲が良くてとても良い友人なのだが、なんせ人の話を聞かない。
放課後、振動を感じてスマホを開けば新着メールが一件。差出人は、雨野さん。
【 単三電池 電球 卵 】
主語もなにもなく、書かれていたのはその3単語。雨野さんらしくて思わず吹き出してしまう。
「奈月ー。今日ドーナツ食べ行かない?」
「ごめん。雨野さんに買い物頼まれちゃって。」
「そっか、じゃまた今度ね!」
千里に手を振って帰り支度を始めれば、聞きなれた声がしてドアからひょこっと黒髪が跳ねる。
「かーえろ。」
「ちょっと待って。」
周りの視線を感じながらも、課題に必要な教科書だけ詰めて教室を出た。
「今日要たち体育バスケだったでしょ。」
「そー。なんで?見てた?」
「クラスの女子が騒いでた。」
その言葉にへー、と声を漏らした要。そして私の方を向いてにやにやと笑う。
「俺がシュート決めたところ見てた?」
「・・見てない。」
本当は見てたけど意地悪でそう答えれば、ちぇー、と子供のように口を尖らせた。
普通科だけでなく工業科も存在する私達の高校では、部活や生徒会で関わりがなければ、顔も名前も知らない生徒もたくさんいある。同級生でもだ。要は2組で私は7組。普段校内で接する機会はあまりなくて。
「そういえば、メール来てた?」
「誰から?」
「雨野さん。」
そう私が言うと要は思い出したように笑う。
「来てた。1人で爆笑しちゃったよ。」
そう言って私に雨野さんからのメールをみせてくる。内容は私に来たものと同じで、また笑ってしまった。
古びた商店街を抜け、路地裏へと入っていく。
錆びて傾いたカーブミラーのある交差点を右に曲がれば、見えてくるのが私たちの家だ。
学校から数十分歩けばたどり着くここ、葛木荘。お世辞にも綺麗とは言えず、最初見たときは「ここに人が住めるのか」と不安に思った程である。けれど、住んでみれば意外と快適だ。夏は暑いし冬は寒いが、それでもトイレは綺麗だし台所も自由に使える。何より皆との距離が近くて一緒に生活している感じが、私はとても好きである。
「ただいまー。」
帰宅は私たちが大体一番乗りだ。各自荷物を部屋に置いたら夕食の準備にとりかかる。
「要。炊飯器スイッチ押してもらっていい?」
「ん。」
皆の洗濯物を分けていた要にスイッチを押してもらう。
・・・5時過ぎに鈴香さんが帰宅して、7時頃に拓海さん。雨野さんは葛木荘の裏で小さな喫茶店を営んでおり、夕食はそっちに運ぶことになっている。