2月(美白パート)
 やっと渡せた。
 やっと告白できた。
 そのことが嬉しすぎて電車で舞い上がってしまう。
 学校に着くと、早速沙耶に報告する。
「わかったわかった。よく頑張ったね」
 親友からも祝福され、後は結果を待つだけだった。間違いなく過去一幸せな時間。まだ結果はわからないけど喜んでくれたし、きっと上手くいく。
 その日は授業も上の空で終始、にへへと笑っていた。
「さすがに浮かれすぎじゃない?」
「えー? そうかなー?」
 幸せオーラ全開でニコニコと笑顔でいっぱいだった。
「クラスの男子が泣いてたよ。誰かは知らないけど、あのみしろんがチョコ渡したんだろうって」
「えー、でも事実だしー」
 浮かれまくる美白に、ちょっとイラっとくる沙耶。
「ふーんだ。もしフラれても慰めてあげないもんね」
「大丈夫だよ。きっと」
「あー、だめだこりゃ」
 沙耶も、もうなると呆れるしかなかった。
 そして美白は帰宅する。ご機嫌なまま、夕飯の席に着く。
「あら、なにかいいことでもあった?」
「まあねー」
 母親との会話も浮かれ気味だった。そして父が帰ってきて、家族で夕飯を食べ始める。
「なあみんな。食べながらでいいから聞いてくれ」
 父親から改まって話があるという。
「あら、どうかした?」
「実はな――」
 父は衝撃の言葉を紡いでいく。浮かれていた美白の表情もみるみる青ざめていって、最後には泣き出してしまった。
「そんな! なんとかならないの!」
「すまん……。もう決まったことだ」
 普段は聞き分けのいい美白が、珍しく反抗したので両親は驚いた。
「せっかく……っ。せっかくいい方向に行くと思ったのに……っ」
 気付けば美白は家を飛び出していた。
 後ろから両親の声がする。だが、美白は夜の街を走っていた。そしてスマホで沙耶に電話する。
「もしもし? のろけならまた明日聞くって」
「……っず。グスッ」
「もしもし? みしろん? どうしたの?」
「うわあぁぁぁぁん! 沙耶ちゃぁぁぁぁぁん!」
「ど、どうしたの!? とりあえず今どこ? 家?」
 美白のただならぬ雰囲気に、沙耶は事情を聞く。
「うん……。うん……。わかった。一旦うちに来な? 親御さんにはあたしから連絡するから」
「うん……。ごめんね……」
「いいって」
 そう言って電話を切る沙耶。
「神様……。そりゃないでしょ……。美白が何したっていうのよ……」
 沙耶も、まさかの急展開に、夜空を仰ぐしかなかった。