1月(昴パート)
 正月休み。
 昴は家でごろごろしていた。
「はあ……」
 頭に浮かぶのは湊士のことばかり。
「あっ、そうだ」
 今まで気づかなかった。湊士と同じように凌悟に相談すればいいのだ。
 そうと決まれば、早速スマホで凌悟に電話する。
「もしもし? 凌悟?」
「もしもし。あけましておめでとう」
「あ、あけましておめでとう」
 新年の挨拶すら忘れてしまっていた昴は、自分が相当テンパってることに気付く。
「どうした? 珍しいな、電話なんて」
「いや、あのさ……。ちょっと相談したくって」
「相談?」
 昴は深呼吸して、凌悟に自分の想いを伝えた。
「あたし、どうやら湊士に恋してるっぽい。どうしよう」
「…………」
「あ、あれ? もしもーし」
 沈黙が帰ってきて、通話が切れたのかと焦る昴。
「ああ、悪い。聞こえてるよ。……湊士に恋した、ね」
「うん。前にバスケの先輩にそんな風に見えるって言われて、なんかしっくりきたのよ」
「……そうか」
「で、どうすればいいと思う?」
 昴とてわかっていた。想いを伝えたところで湊士には好きな人がいる。だから自分は選ばれないだろうということに。
 しかし、凌悟から意外な答えが返ってきた。
「来月、バレンタインあったよな?」
「え? う、うん……」
「告っちまえばいいんじゃね?」
「ええ!? いいのかな!?」
「告ってフラれたほうがスッキリするかもしれないぞ?」
「ああ、なるほどね……。でも、なんでバレンタイン?」
「明日いきなり告っても湊士が戸惑うだろ。そういうのはそういうイベントに乗っかっとけばいいんだよ」
「確かにね。ありがと。来月頑張ってみる」
「おう。じゃあな」
 そう言って通話が切れた。
 昴の心はさっきよりすっきりしていた。
「ははっ。断られることがわかってる告白か。我ながら謎い行動するなあ」
 言葉ではそう言ってもやめるつもりはなかった。
 それから1か月。昴はチョコ作りの練習をした。
 毎晩毎晩、母に手伝ってもらい、チョコを作る。味見は昴の弟がやってくれた。中学生の弟は毎日チョコが食べれてご満悦だった。
 そして日付は2月14日になる。忘れないように完成したチョコを鞄に入れて、勢いよく登校した。