12月(美白パート)
すっかり世間はクリスマスムード。
美白はクリスマスプレゼントを湊士に渡すか、悩んでいた。
困ったときには相談ということで、沙耶に聞いてみた。
「うーん。いいとは思うけど、まだ心の整理ができないなら焦らなくってもいいかもね」
「どうして?」
「どうせ2月にはあたしたち女子にとって特大イベントがくるじゃない」
「2月……あっ」
2月と言えばバレンタインデー。その日は女子が思い切って告白する一大イベント。
「クリスマスってどっちかって言うと、すでに付き合ってるやつらが盛り上がるイベントって感じがするんだよねー」
「まあ、確かに?」
そうであるような違うような。美白は流されるまま沙耶の話を聞いていた。
「それに、あいつの好みがわからないのに下手なプレゼント渡せないでしょ」
「あっ、そうだね……」
「それよりも、チョコっていう確実に男子が嬉しがるものが指定されてるのよ? だったらバレンタインまでに覚悟決めてその日を決戦日にしたほうがいいんじゃない?」
「そ、そうだね。そうするよ」
「そーれーよーりー。せかっくのクリスマスだし、パジャマパーティーしない?」
「え? 私たちで?」
「うん。……ダメ?」
最近、沙耶は美白に甘えることが多くなった。もしかしたら、もうすぐ湊士のところへ行ってしまうことを予感しているからかもしれない。
だからこそ美白は最大限、沙耶を甘やかした。
「いいよ。うちでいい?」
「うん! 楽しみにしてる!」
こうして美白のクリスマスは沙耶とのパジャマパーティーになった。
そうしてクリスマス当日。
「こんばんわー」
沙耶が美白に家にやってきた。
「いらっしゃい」
美白が出迎えて部屋へ案内する。
きれいに片付いた部屋。しかしよく見ると小さなぬいぐるみなど、女の子らしい部屋になっていた。
「どうする? 先にお風呂にする?」
「ごめーん。先ご飯がいいかな。実はお腹ペコペコ」
「ふふっ。わかった」
美白は母親に先にご飯にする旨を伝え、出来上がるまで雑談することに。話の内容は、湊士とは関係ないもので、学校の成績のことやゲームのとこなど、他愛ないものだった。
その後、二人は白雪家で夕飯を食べる。
美白の両親も沙耶のことは知っており、暖かな空間での食事となった。少し休憩して二人は一緒にお風呂に入る。沙耶がべったりくっついてくるが、美白は無下にすることなく笑っていた。
そしてパジャマに着替えて二人は同じベッドに入る。
「ねえ、起きてる?」
「もちろん」
「なんか話さない? せかっくのパーティーなんだし」
「なににしようか?」
「そうだねえ……」
そこで二人の会話は切れてしまった。こういう時、たいがい恋バナで盛り上がっていたが、その話題を出すことが怖かった。
美白は覚悟が決まらないこと。
沙耶は美白が遠くに行ってしまうような錯覚に陥ること。
それぞれの理由で今はその手の話題は避けていた。しかし、長い沈黙はどうしても湊士のことを思い出させる。
「ねえ、私、どうなるのかな?」
「どうって?」
「告白して断られたら、沙耶ちゃん慰めてくれるでしょ?」
「当然!」
沙耶の口調は強かった。それだけ本気だと美白にも伝わる。
「でも、上手くいったら、沙耶ちゃんが消えちゃいそうな気がして……。それが怖くって……」
「みしろん……」
美白にとって湊士への告白の成功はいいことのはずだ。しかし、同時に親友との時間が減り、疎遠になるのを恐れていた。
「私怖いよ……。沙耶ちゃんと離れたくない」
「あたしだって、美白んと離れたくない」
「うん。でも、それ以上に平賀くんと付き合いたいって思ってる」
「……そっか」
再び訪れる沈黙。
沙耶は黙って美白の手をぎゅっと握る。
「沙耶ちゃん……?」
「あたしはどこにも行かないよ。みしろんがあいつと付き合っても、あたしはみしろんをデートに誘うから」
その言葉を聞いて、美白はぷっと吹き出した。
「付き合う前から浮気するんだ、私」
「そうだよ。別にいいじゃない。浮気の一つも許せないとか解消のないこと言ったらビンタしてやんな」
「ふふっ。そうだね。沙耶ちゃんとも、仲良くなってほしいなあ」
「あいつと? それはいいよ」
「なんで? 3人でずっといれれば私は幸せ」
「まったくこの子は……。いつの間にそんなに強欲になったの?」
「わかんない。いつからだろうね」
そうして二人で笑いあった。
そんな中、美白は決意を固めつつあった。バレンタインに告白するという決意を。
すっかり世間はクリスマスムード。
美白はクリスマスプレゼントを湊士に渡すか、悩んでいた。
困ったときには相談ということで、沙耶に聞いてみた。
「うーん。いいとは思うけど、まだ心の整理ができないなら焦らなくってもいいかもね」
「どうして?」
「どうせ2月にはあたしたち女子にとって特大イベントがくるじゃない」
「2月……あっ」
2月と言えばバレンタインデー。その日は女子が思い切って告白する一大イベント。
「クリスマスってどっちかって言うと、すでに付き合ってるやつらが盛り上がるイベントって感じがするんだよねー」
「まあ、確かに?」
そうであるような違うような。美白は流されるまま沙耶の話を聞いていた。
「それに、あいつの好みがわからないのに下手なプレゼント渡せないでしょ」
「あっ、そうだね……」
「それよりも、チョコっていう確実に男子が嬉しがるものが指定されてるのよ? だったらバレンタインまでに覚悟決めてその日を決戦日にしたほうがいいんじゃない?」
「そ、そうだね。そうするよ」
「そーれーよーりー。せかっくのクリスマスだし、パジャマパーティーしない?」
「え? 私たちで?」
「うん。……ダメ?」
最近、沙耶は美白に甘えることが多くなった。もしかしたら、もうすぐ湊士のところへ行ってしまうことを予感しているからかもしれない。
だからこそ美白は最大限、沙耶を甘やかした。
「いいよ。うちでいい?」
「うん! 楽しみにしてる!」
こうして美白のクリスマスは沙耶とのパジャマパーティーになった。
そうしてクリスマス当日。
「こんばんわー」
沙耶が美白に家にやってきた。
「いらっしゃい」
美白が出迎えて部屋へ案内する。
きれいに片付いた部屋。しかしよく見ると小さなぬいぐるみなど、女の子らしい部屋になっていた。
「どうする? 先にお風呂にする?」
「ごめーん。先ご飯がいいかな。実はお腹ペコペコ」
「ふふっ。わかった」
美白は母親に先にご飯にする旨を伝え、出来上がるまで雑談することに。話の内容は、湊士とは関係ないもので、学校の成績のことやゲームのとこなど、他愛ないものだった。
その後、二人は白雪家で夕飯を食べる。
美白の両親も沙耶のことは知っており、暖かな空間での食事となった。少し休憩して二人は一緒にお風呂に入る。沙耶がべったりくっついてくるが、美白は無下にすることなく笑っていた。
そしてパジャマに着替えて二人は同じベッドに入る。
「ねえ、起きてる?」
「もちろん」
「なんか話さない? せかっくのパーティーなんだし」
「なににしようか?」
「そうだねえ……」
そこで二人の会話は切れてしまった。こういう時、たいがい恋バナで盛り上がっていたが、その話題を出すことが怖かった。
美白は覚悟が決まらないこと。
沙耶は美白が遠くに行ってしまうような錯覚に陥ること。
それぞれの理由で今はその手の話題は避けていた。しかし、長い沈黙はどうしても湊士のことを思い出させる。
「ねえ、私、どうなるのかな?」
「どうって?」
「告白して断られたら、沙耶ちゃん慰めてくれるでしょ?」
「当然!」
沙耶の口調は強かった。それだけ本気だと美白にも伝わる。
「でも、上手くいったら、沙耶ちゃんが消えちゃいそうな気がして……。それが怖くって……」
「みしろん……」
美白にとって湊士への告白の成功はいいことのはずだ。しかし、同時に親友との時間が減り、疎遠になるのを恐れていた。
「私怖いよ……。沙耶ちゃんと離れたくない」
「あたしだって、美白んと離れたくない」
「うん。でも、それ以上に平賀くんと付き合いたいって思ってる」
「……そっか」
再び訪れる沈黙。
沙耶は黙って美白の手をぎゅっと握る。
「沙耶ちゃん……?」
「あたしはどこにも行かないよ。みしろんがあいつと付き合っても、あたしはみしろんをデートに誘うから」
その言葉を聞いて、美白はぷっと吹き出した。
「付き合う前から浮気するんだ、私」
「そうだよ。別にいいじゃない。浮気の一つも許せないとか解消のないこと言ったらビンタしてやんな」
「ふふっ。そうだね。沙耶ちゃんとも、仲良くなってほしいなあ」
「あいつと? それはいいよ」
「なんで? 3人でずっといれれば私は幸せ」
「まったくこの子は……。いつの間にそんなに強欲になったの?」
「わかんない。いつからだろうね」
そうして二人で笑いあった。
そんな中、美白は決意を固めつつあった。バレンタインに告白するという決意を。