9月(湊士パート)
 ようやく長い夏休みも終わり、学校が再開する。
 それはつまり、また美白に会える日々が始まるということだ。
 時刻は7時16分。
 いつもの時間に1番ホームへ行き、電車に乗り込む。
いつもの日常。いつもの指定席。
しかし、美白の様子だけが何かおかしかった。いつも笑顔で会釈してくれた美白は、ボーっと外を眺めていた。なんというか、意識して湊士を避けている気さえする。
声をかけようか考えたが、彼女のポリシーに反するのでやめておいた。
学校に着き、早速二人に相談してみる。
「――ってことなんだけど。どうしたと思う?」
「うーん。彼氏ができたとか?」
「ぐはあ!」
 湊士の心に大ダメージ。だが、湊士とて考えなかったわけじゃなかった。
 あれだけいい子なのだ。彼氏がいてもおかしくない。
「彼氏、かあ……」
「なんで昴も上の空?」
「え? あ、いや! なんでもない!」
 美白だけでなく、昴の様子もおかしかった。なんというか、湊士に対し、よそよそしい。
「なー、やっぱ女子目線でも彼氏だと思う?」
「…………」
「おーい。すばるーん」
「……はっ! なに?」
 湊士はため息をつきながら昴を小突く。
「おいおい頼むぜ。昴までポンコツになったら俺らただの3馬鹿じゃねえか」
「おい。俺を勝手に馬鹿の仲間にするな」
「残念だったな。もう遅いぜ。この前現国の先生が俺を注意したとき、『うるさいぞ3馬鹿!』って言っただろうが」
「そうだった……。マジで不名誉なんだが?」
 こんな馬鹿な話をしても、昴は全く突っ込まなかった。
「はあ……。今日は相談無理っぽいな。また明日頼むわ」
「…………そうだな」
 夏は人を変えるというが、変わり方がおかしい二人。湊士は女性にしかない悩みなのかな? と疑問符を頭に浮かべるのだった。