「遡ること七年前...。当時私は十五歳で、姉は二つ上で十七歳だった。その年に姉は死んだの...。その日から、私の心はどこかぽっかりと穴が開いたようになってしまった...」
 誠は真剣な顔とまなざしで私の話を聞いてくれた。
 そう...姉が死んでから、ただひたすらに毎日が過ぎていって...何をするにも力が抜けたような脱力感と虚無感があった。
 そして、世界がどんどん進んでいく中で、私だけが取り残されたように絶望の中にいた。いつも私を励ましてくれて、勇気づけてくれ、一番近くで支えてくれ
たのが姉だった。でももう姉はいない。
 私の世界は急に無色になった。あの日から私は変わってしまったのだ。

 「姉は生まれつき病気を患っていた。幼いころから入退院を繰り返してて、なんとか病気と闘っていた。それでも完治は難しくて、小中高と学校もまともに通うことはできなかった。
 高校生の時、病気が一気に悪化して、姉は十七歳という若さで亡くなった。当時の私は、姉が亡くなったという事実を受け止めきれず、たくさん泣いた。両親も愛する娘が亡くなってしまったショックから、少しずつ距離ができ始めていた。私たち家族の絆は姉を含めた四人でできていた...
 そんなどうにもできない、切なくて悲しい現実が立ちはだかり、何とかして向き合っていかなければとずっと考えてた...。

 そして、姉が亡くなって三年が経とうとしていた時、姉が臓器提供の意思を持っていたということを知ったの。お母さんとお父さんは姉がそんな話をしてきたことを私には内緒にしてた。当時の私はほんとにショックが大きくて、それ以上追い込まないためにも伝えなかったみたい...。
 ただ、時が流れるにつれて、お母さんがこの話をしてくれた...
 そして、臓器提供を行うための様々な手続きや複雑なやり取りが行われていたというのを十八歳になった頃に知った。その頃、姉が本来生きていれば二十歳という成人式を迎える、節目の年でもあった...昔のあまり親しくない姉の知人から、同窓会の招待状が実家に送られてきた。
 もし、姉が生きていたら...ふとそんなことを思ってしまい、目頭が熱くなったのを今でも覚えてる。臓器提供の話を聞いた時は、すぐに理解できなくて、姉が臓器提供、信じられない、っていう思いと衝撃が大きかった。ただ、徐々に...もしその相手が存在するなら?