「うん。ありがとう」
 
 私はコーヒーを淹れようとキッチンに向かった。
 誠がリビングに着いたとき、棚の上に置かれた一枚の家族写真を見つけた。
 「これ、小さいときの美桜?とご家族かな。かわいいね。隣にいるのは......」
 「......あっ、うん、私の家族だよ。小さい時に撮ったんだよね。
 隣にいるのは私の姉の由奈だよ。」
 「へえーお姉さんがいたのか。僕も今度ご家族に会いたいな」
 「...そうだね、みんなにも伝えておくね」
 「うん、楽しみにしてる」
 少し複雑な顔を浮かべる美桜。
 「どうしたの、美桜?何かあった?」
 「あ、う、うん。実はさ...お姉ちゃん、死んじゃったんだよね.........」
 「えっ...そうだったんだ...ごめん。無神経に。何も知らなくて...」
 「ううん、大丈夫だよ。私も何も言ってなかったし。ごめんね。...あっ!
 コーヒー淹れたよ!飲もっ!」
 私は無理やり作り笑顔を見せた。
 そこには今までにない不穏な空気が流れていた。

―誠
 あれ?美桜、急にどうしたんだろう。
 お姉さんのこと何も知らなくて、辛い記憶を思い出させてしまったのは申し訳なかったけど、あんな表情の美桜は初めて見た。
 どうしてお姉さんは亡くなってしまったのか、理由は何だろう。何かあったのだろうか。いつも明るい美桜からは想像できない顔をしていた。
 僕にもいつか打ち明けてくれるのだろうか。
 とりあえず今は、そっとして、美桜が話してくれるのを待つしかない。

 ついにこの日が来てしまったのか。私は真実を打ち明けるべきなのだろう。
 姉がなぜ亡くなったのか、そしてこれまで隠していた真実を...。それなのに、あまりにも突然すぎて、言えなかった。いつかはって、覚悟していたはずなのに...
 しかし、ずっとこのまま何も言わずにいるなんてことは許されない。
 今、勇気を出して伝えるしかないのだ。
 
 「...誠、話があるの。ちょっといい?」
 「うん。わかった」
 二人はテーブルをはさんで、向かい合う形で椅子に座った。
 私は恐る恐る姉・由奈について、そして真実を話し始めた。