「それにしても学校までわざわざ届けに来るなんて、ちょっとびっくりだね。学校も名前も知られたわけだし大丈夫なのかな?いい意味でも悪い意味でも、ね?」
 「ちょっとやめてよ。さすがに悪い人には見えなかったよ」
 「えー、でもわかんないよー?」
 と言って梨乃はにやにやしていた。
 こんな梨乃も私は好きだ。
 こうして夜中まであーでもない、こうでもない、くだらない話をたくさんした。
 
 
 「では、これで終わります。ありがとうございました」
 「失礼します」
 ガチャッ。ドアを閉める。はー、また面接で落ちた気がする。
 落ち込み気味のまま会社の通路を歩いてエレベーターへと向かう。
 すると、誰かに声をかけられる。
 「あっ。えっ、もしかして、この前の...」
 振り返るとそこにはこの前の彼がいた。
 「えっ、パスケースの...」
 
 会社のロビーへと移動し少し話す二人。
 「まさか、また会うなんて、本当にびっくりしました...」
 「私も、まさか、またお会いするなんて。なんか恥ずかしいですね」
 「ですね。そういえばこの前も、電車で見かけた時スーツでしたよね。もしかして...」
 「そうなんです。実は就活生で、大学四年生なんですよね。あははは」
 うわー、最悪すぎる。こんな格好でまた会うなんて。まさかすぎて。
 「あっ、やっぱり。そうなんですね。どうですか?順調ですか?」
 「あっ、そうですね...まあ手ごたえはあり...ますね。あはははは」
 咄嗟に?をついてしまった。全然やばいのに。最悪だ。
 まあもう会わないだろうし。忘れよう。
 「そうなんですね。それは何よりです。
 ...あのっ、もしよかったら連絡先交換しませんか?」
 「えっ」
 「迷惑なら結構です。ただこれも何かの運命かなって思って」
 「迷惑なんて全然...。もちろんです」
 「よかったぁ。じゃあ!」
 連絡先を交換する二人。お互いのアイコンがスマホに表示される。
 「河合誠さん、ですか。お名前...」
 「あっそうです。そういえば名前お互い言ってなかったですよね」
 「青木美桜です」
 「美桜さん。よろしくお願いします」
 「はい、こちらこそ...よろしくお願いします」
 「なんか、変な感じですね」
 「そう...ですね」
 お互い何だか気恥ずかしくなり、誠は慌てたように、