雑踏としたビルの群れの中を無機質に通り過ぎる。静かに沈む夕日と見慣れた景色を横目に、変わらぬ日々を過ごしながら、私は、今日も電車に揺られている。
 果たしていつまで続くのだろうかと考える。大学四年生になり、あっという間に就活が始まった。今日で何社目だろう。特にやりたいことも見つからず、片っ端から応募しているが内定は未だ出ていない。ここまでくると焦りを通り越し、いっそニートにでもなってしまおうかと開き直りたくなってしまう。
 ぼんやりと外を眺め、そんなことを思いながら、まもなく電車が最寄り駅に到着する。お腹空いたな、今日は何を食べようか、気分を変えて電車を降り、改札へと向かう。
 
 「あ、すいません。落ちましたよ」
 「...あ」
 ぼんやり考えこみすぎて動作が遅くなってしまった。
 
 プシュー。電車のドアが閉まり、発車する。
 「...あー、最悪だ。どうしよう」
 おそらく落としたのはパスケースだ。パスモも入っているし、学生証も入っている。とことん今日はついていない。どうすればいいか、必死に考える。まあ、さっきの人が駅に届けてくれるだろう。改札で駅員さんに伝えて後日取りに行けば問題ないか。そんな風に言い聞かせ、少しモヤモヤしながらも帰路につく。
 
 「あー疲れたー」
 家に着くなり私はベッドにダイブした。大学生になって地元の静岡から上京し、東京で一人暮らしを始めて早四年。さすがに慣れてきたけど、静かな部屋は落ち着かない。仲の良いと言える友達も数えるくらいだが、これといった問題もない。そして、ダラダラと日々が過ぎ、気づけばもう卒業の年になってしまった。何より就活を頑張らないと、このままでは本当にニートになってしまう。若干の焦りを感じながら、夜ご飯の準備をする。


 今日は朝から大学に書類を取りに行かなければならない。
 就活生というのは本当に大変だ。
 世の中のすべての就活生は一体どうやって乗り越えているのか。
 つくづく感心してしまう。私の就活はいつ終わるのだろう。今日も憂鬱だなぁと感じながら、駅から歩いて大学へと向かう。
 久しぶりの学校は何だか新鮮で、私はこの四年で何を学んだのだろうかと考えてしまう。昔はもっと華やかな大学生を思い描いていたのに、現実はやはり厳しい。