「今の段階では何とも......、俺、お経とか無理そうだし。でも、お坊さんもいいかもな」
「お坊さんになるには、師僧を見つけないと。話はそれからよ」
「これから、色々お寺を見てみるよ。俺たちはまだ高校生を続けるけれど、高校生の時期なんてあっという間だよ。将来も考えないと」
「そうね......。けど、あんた変わったわ」
「変わった? 俺が??」
「うん」
「美沙に会ったからだよ。俺を変えたのはお前だ。感謝してる」
「ん。まぁ頑張りなさい」
 美沙は最後に笑顔になった。
 俺たちはこうして、別れた。

 夏休みもあと数日で終わる。
 俺の夏休みは、とにかく仏教色に染まったよ。
 歎異抄を読んでみたり、五木寛之さんの「親鸞」に目を通したり。
 親鸞聖人は知るほどに奥が深い人物だ。
 日本が生んだ、偉大なお坊さんでありながら、思想家でもある。
 俺も親鸞聖人の教えをもっと知りたい。
 そのために、今は色んな本を読み、勉強していくのだ。
 その日の夜――。
 美沙から連絡があった。
 どうやら、今日東京に向かって旅立つらしい。
 新幹線で行けば楽なのに、美沙は高速バスという選択を取ったみたい。
 新潟から東京の新宿まで向かうバスが、いくつか出ている。
 それに乗るらしい。
 出発は二十三時。
 俺は出発前にバスセンターに行き、そこで美沙の見送りをすることにした。
 すると、意外な美沙がそこにいた。
 なんと、美沙は坊主頭になっていた。
 帽子をかぶっていたけれど、ギャルの容姿に坊主というかなり奇抜な格好になっていた。
「坊主にしたのか?」
「うん、得度したから」
「得度って僧侶になる儀式だよな」
「女子は坊主にしなくてもいいんだけど、人生で一度くらい坊主にしてもいいかなって。まぁ、いいじゃない」
「可愛いと思う。小坊主みたいで」
「それ褒めてんの?」
「褒めてるよ。美沙頑張れよ。俺も頑張るから」
「うん」
 美少女×坊主×ギャル......。
 美沙、とにかくお前は凄い奴だよ。
「美沙、しばらくお別れなんだな」
「そうね。お別れね......」
 美沙は少し寂しそうな顔をした。
 その顔を見た俺は、思わず彼女を抱きしめてしまった。
「えぇぇぇぇ。ちょっとあんた何してるのぉ?」
「好きだから。それ忘れないでね」
「......き」
「え?」