「帰れよ。俺も話があるんだ」
 二階堂は頑なだ。
 だけど、俺だって美沙に色々聞きたいことがある。 
 帰るわけにはいかないんだよね。
「二階堂さん。私もあなたに話があります」
 と美沙が告げた。
 すると、二階堂は美沙の手を掴んだ。
「話って何?」
「私はあなたとは付き合えません」
「は? なんでだよ?」
「私はこれから東京の高校に引っ越すんです。それに、私はあなたのようなタイプ嫌いです」
 すると、二階堂の目つきが変わった。
 彼は何を思ったのか、美沙を抱きしめ、強引にキスしようとしたのだ。
 その瞬間、俺の中で何かが切れた。
 途端、俺は二階堂に飛び掛かっていた。
「美沙から離れろ!」
 俺は二階堂に殴り掛かった。
 だけど、あっさり交わされ、変わり重いパンチを受けた。
「お前は黙ってろ。美沙、俺の女になれ! ならないというなら、こいつをボコボコにするぞ」
「どんな悪人でも救う。それが私の役目です」
 と美沙は言った後、さらに続けた。

「摂取の心光、つねに照護したまふ」

 これも親鸞聖人の言葉だろうか?
 俺も意味がわからない。
 もちろん、二階堂だってわからないだろう。
「は? 何を言ってるんだ?」
「阿弥陀さまの光明はいつも私たちを摂め取ってお護りくださるって意味です」
「だからどうした?」
「私は仏教の教えを説くのです。まずはあなたを更生させます」
「は? ますます意味わかんねぇ。美沙の家がお寺ってことは知ってるけどさ。お前、この家継ごうとしてるのか?」
「そうです。私は僧侶になるのです。だから、あなたとは付き合えません。あなたが榊原にしたことは許せません。しかし、阿弥陀さまの慈悲の心をもって、今回だけ特別に許します。私はあなたの女になんてならない」
「クソ! いい加減に言うことを聞け!」
 ここまでフラれたのに、二階堂は強引さを緩めない。
 なんと美沙をさらに近づけ、そのまま唇を奪おうとした。
 俺は腹を殴られた痛みで動けない。
 でも立たないと......。
 美沙を守らないと。
 だけど、目の前でありえない光景が生まれた。
 なんと、美沙が二階堂を一本投げしたのだ。
 ズドン!
 一本!!
 軽やかに決まった。
 二階堂はキョトンとしている。
 投げられたことに、カラダがついていかないようであった。