それを聞き、美沙はすべてを察したようであった。
「榊原、あんた最低よ。自分の彼女を泣かせて」
「これには理由があるんだ」
「り、理由って何よ?」
「そ、その、つまり......、俺が好きなのは......、瞳ちゃんじゃなくて、美沙なんだ。ずっと気持ちに気づかなかった。だけど、好きなんだよ。それが止まらない」
 美沙は驚いた瞳を浮かべた。
 そして、わなわなと震えはじめた。
「あたしはあんたなんか好きじゃないわ」
「......そうだよな、俺は最低の男だ、彼女をフッて、泣かせて、自分でもイヤになるよ」
「わかってるじゃない」
「うん。だけど、言わせてほしい。俺は中途半端な気持ちで瞳ちゃんと付き合えない。もしも、自分の気持ちにウソをついたら、きっと今以上に瞳ちゃんを傷つけてしまう」
 俺たちのやり取りを見ていた瞳ちゃんが、か細い声で言った。
「私、死にます。生きてる価値ないです」
「そんなこと言わないで」
「ダメです。だって私、知立さんを傷つけようとした。死んじゃえばいいのにって思ったの。私も最低だよ」
「佐伯さん、あなたは何も悪くないわ。悪いのは榊原よ。こんな最低男なんて忘れなさい」
「でも、悠真君はすべてなのに......」
 すると美沙は、泣き崩れている瞳ちゃんの肩を抱きしめ、そして、絞り出すように言った。

「定散自力の称名は
 果遂のちかいに帰してこそ
 おしえざれども自然に
 真如の門に転入する」

「知立さん? 何を言ってるの? 私を死なせて、お願いだから」
「落ち着いて、あなたには真如という言葉を伝えたい。真如とはモノの真実の姿。あなたは今、真実を知ったの。辛いと思う。だって信じていた人に裏切られたんだから。でもね、その事実は消えない。榊原は確かに最低の男よ。だけど、彼は真実を語ってる。つまり、あの男はあなたに振り向かない。今はその真実を受け入れらないかもしれない。納得できないかもしれない。だけど、真実を知らないで過ごすよりも、ずっと真実を知った今の状態の方がいいのよ」
「でも、私には彼しかいないの」