金剛心は菩薩心
 この心すなわち他力なり」

いつも通り?である。
 俺が唖然としていると、美沙が意味を語った。
「信仰する心っていうのは、一心と言えるわ。つまり、一つの事に心を集中することね。そして、この心は、ダイヤモンドのように堅いの。その堅さは、他の誤った信心を打ち砕くわ。それと同時に、自らは破れない。そのような堅い信心は、自分でおこすのではなくて、阿弥陀さまからいただく他力の信心なのよ」
「うん、それが、どう俺と関係する?」
「つまり、恋愛も同じって意味よ」
「恋愛も同じ?」
「そう。信心というのは阿弥陀さまからいただくもの。そして、恋愛というもの、感情をいただくわけでしょ。つまり、起こすのは自分自身ではない。恋愛は周りの条件によって、いただくものなのよ。今のあんたにピッタリでしょ? あんたは佐伯さんを幸せにする。それが、あんたの役目よ」
 それだけ言うと、美沙は俺の前から消えていった。
 俺に痛烈な傷を残してね......。

 三日後――。
 佐伯さんの告白の返答をしないとならない。
 だから俺は、彼女を屋上に呼び出した。
 放課後の屋上――。
 天気は良く、晴れ晴れとしている。
 だけどね、俺はそんなに気分がいいわけじゃない。
 美沙の言う通り、俺は佐伯さんを幸せにするべきなんだ。
「佐伯さん、この間の告白の答え、言うよ」
「はい」
「俺、佐伯さんと付き合うよ。よろしくお願いします」
 俺は悩みに悩んだ。
 自分の気持ちに整理をつけずに、突っ込んでしまったと言えるだろう。
 恋愛はいただくものだ。
 それに、俺は佐伯さんを悲しませたくなかった。
 けどね、この選択は俺にとって痛烈な悪手だったんだ。
 けど、この時はまだ、それに気づかないでいた。
 人は人を傷つける。
 それに、恋ってなんていうか、どこか自分ヨガリというか、そんな感じがするんだよね。
 少なくとも俺は、美沙に拒絶されたから、その傷を癒してほしいために、佐伯さんを選んだんだ。
 最悪だ、俺――。
 そんな俺の心境とは裏腹に佐伯さんはぽろぽろと涙を見せた。
「さ、佐伯さん」
「あ、ゴメンなさい。わ、私嬉しくて......。これからよろしくお願いします。榊原君」
「うん。佐伯さん」
 俺たちは一緒に帰る。
 カップルになった。
 つまり恋人同士だ。