「知ってるわ。そのくらい」
「え?」
「だから知ってる。二階堂さんは根っからの悪人よ」
「ならどうしてあんな奴と。あいつなんてやめた方がいいのに」
「浄土真宗の教えよ」
「教えって何だよ」
「親鸞聖人は善人が救われるのだから、悪人は余計に救われると言ってるの。それを証明するわ。あたしがあの人を真人間にしてやるの。それがあたしの役目だから。それより、あんたはどうなの?」
「え? どうって何が?」
「女子の情報網をなめないで。告白されたんでしょ? あんた」
 それを知っているのか?
 何か恥ずかしい......。
「あぁ、そうだけど」
「ちゃんと応えてあげなさい。佐伯さん、いい子だから、悲しませちゃダメよ」
「それはそうかもしれないけど。それより、知立さんも大丈夫なのか?」
「ん? 大丈夫って何が?」
「だから生徒会長だよ。あいつを更生させるのは結構難しいと思うけど」
「大丈夫よ。浄土真宗の教えを説けば、きっとわかってくれるはずだから」
「そう、そうか......」
 やはり、俺は必要ないのか?
 そう考えるとものすごく寂しい。
「俺は、もう協力しなくていいのか?」
「協力って? 新聞部の件?」
「まぁそれもそうだけど、浄土真宗を広めるってお前の夢にだよ」
 すると、美沙は意外そうな顔をした。
 だけど、すぐにキッと真剣な顔になる。
「大丈夫よ。あんたは佐伯さんと幸せになる。それでいいのよ、それですべて上手くいくから」
 上手くいく?
 本当にそうだろうか?
「だけど......」
「いいから、あたしは一人で大丈夫だし、生徒会長も更生させてみせるから」
「あぁ、わかったよ」
 俺はわかった。
 俺は――。
 美沙に必要とされたい。
 なのに、それは叶わないようだ。
 俺は、やっぱり佐伯さんと一緒になるべきなんだ。
 美沙を忘れよう。
彼女の中にすでに俺はいない。
彼女が好きなのか?
それもよくわからない。
人を好きになるって何?
ホントよくわからないよ。
教えてほしい。
だけど、その言葉をここで口にしても、きっと彼女は受け入れてくれないだろう。
「あんたにとっておきの親鸞聖人の言葉を教えてあげるわ」
「え?」
「いいから聞きなさい」
 美沙は呼吸を整えると、次のように言ったんだよね。

「信心すなわち一心なり
 一心すなわち金剛心