「うん。俺の方こそゴメン。すぐに返事できなくて」
「いえ。知立さんの言葉に、背中を押されたような気がします。榊原君、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです。また、二人でどこかに行きたいですね」
 この子は本当にいい子だ。
 それはよくわかる。
 なのに俺は......。
 結局、俺と佐伯さんはその日は別れた。
 俺は家に戻るなり、熱いシャワーを浴びて、自室戻った。
 ちゃんと考えないとダメだ......。
 佐伯さんの気持ちに応える。
 それが一番いいはずだ。
 なのに......。
 不思議な気持になる。
 告白されて嬉しいはずなのに、どういうわけか切なくなるのだ。
 切ないよ。
 本当にね。

 翌日――。
 俺はある人間に呼ばれた。
 それは美沙や佐伯さんではなく、
 二階堂一馬さんだった。
 二階堂さんは俺を屋上に呼んだ。
 屋上は美沙と会議をして以来行っていない。
 なんとなく、久しぶりに感じたよ。
「あの、生徒会長が何の用ですか?」
「あのさ、君美沙の何なの?」
 ん?
 何か態度が違う。
 集会で見るような凛々しい生徒会長ではなく、もっとこう砕けている。
 それも悪い方に砕けているように感じた。
「何なのって、クラスメイトですけど」
「ホントにそれだけか?」
「はい。そうです」
「なら。邪魔すんなよな」
「邪魔?」
「そうだよ。俺は美沙を手に入れる。だからお前とはもう会わない。それでいいな?」
 いいも悪いも、そんなことは俺には決められない。
「美沙さんは何て?」
「人の女を名前で呼ぶなよな。生意気な奴だな」
「す、すみません。知立さんは何て言っているんですか?」
「何ってなにも言ってねぇよ。ただ、お前と会ってから様子がおかしいみたいだからさ。だからあらかじめ言っておく。美沙に手、出すなよ」
 それだけ言うと、二階堂さんは俺の前から消えていった。
 仮面......。
 そう。仮面だ。
 あの生徒会長は、二面性がある。
 普通の生徒や先生に見せる顔。
 そうではない時に見せる本当の顔。
 まぁ俺が言っても仕方ないんだけど。
 屋上から降り、廊下を歩いていると、前方に鈴奈さんの姿があった。
 彼女は俺を見つけるなり、そばにやってきた。
「やぁ榊原君、元気してた」
「まぁまぁですかね?」
「そう。君と美沙君ってケンカでもしたの?」