何となくだけど、そんな風に感じたよ。
 俺は少し遠慮したけれど、彼女がどうしてもというので、一口パンケーキをもらった。
 それも自分でフォークを使って食べたわけではない。
 恋人同士がするみたいに、「あーん」して、食べさせたもらったんだ。
「美味しいですか?」
 ウルウルした佐伯さんの瞳が俺を見つめている。 
 正直、緊張によって味はよくわからなった。
「うん、美味いよ......」
 と、俺はそれだけを言う。
 なんだこれ......。
 これじゃあまるで、恋人同士みたいじゃないか。
 パンケーキを食べ終えると、佐伯さんが顔を赤くしてこっちを見ていた。
 あぁ。そんな顔で見られると、俺も恥ずかしくなってくる。
「どうかした?」
「いえ、何か嬉しくて」
「嬉しい......、そう」
「私、ずっと夢だったんです。榊原君と、こんな風にしてカフェとか行くの。だからありがとうございます」
「いや、別にいいけどさ。俺、特に何もできるわけじゃないのに、そう言ってもらえると、何かありがたいっていうか」
「はい、あの、この間の話覚えていますか?」
「この間の話?」
 色々話しているから、一体何なのかわからなかった。
 すると、佐伯さんはもじもじとしながら告げたんだよね。
 まったくさ、初々しい反応だよ。
「マリンピア日本海の話です」
「あぁ、水族館の......、確か今度行くって話だったよね?」
「はい、今週の日曜日とかどうですか?」
 俺は部活もしてないし、基本的に日曜日は暇だ。
 だから、一緒に行ってもいい。
 だけどさ、本当にこのままでいいのかな?
 俺はそれがよくわからない。
「行きましょう。行けば楽しいですから」
 と、佐伯さんは勇気を振り絞ったように告げた。
 ここまで言われると、断れなくなってしまう。
 なら――。
「わかった。一緒に行こう。マリンピア日本海に」
「ホントですかぁ、うわぁ、ありがとうございますぅ。私すごい嬉しいです」
 佐伯さんの笑顔は本当に天使のように見えた。
 人懐っこい、犬のような顔。
 ホントに可愛いよ。
 それこそ、俺にはもったいないくらいだ。
 俺は結局、佐伯さんとマリンピア日本海に行く約束をして、その日は別れたんだよね。

 日曜日――。
 マリンピア日本海に行く日。
 今日は午後一時に新潟駅の前で待ち合わせだ。