なーむーふーかーしーぎーこーう
ほうぞーぼーさーいんにーじー
ざいせーじーざいおうぶっしょー
とーけんしょーぶつじょうどーいーん
こくどーにんてんしーぜんまーく
こんりゅうむーじょうしゅーしょうがーん
ちょうほつけーうだいぐーぜーい
ごーこうしーゆいしーしょうじゅー
じゅうせいみょうしょうもんじっぽーう」

 んんん、なんだ。何が起きた?
 女の子の声でお経みたいなものが聞こえた。
 お経というと、壮年のお坊さんの低い声が定番だが、知立さんの声は、浜崎あゆみとあいみょんを足して二で割ったような声なのだ。 
 だからこそ、重厚に聞こえるはずのお経が、凄くライトに聞こえる。
「あたしの秘密を知ったんだから、あんたにも協力してもらうわよ」
「へ? 協力? 何をするの?」
「あのさ、一応聞くけど、浄土真宗って知ってるでしょ? 知らないと許さないんだからね」
 じょうどしんしゅう?
 何となく聴いたことがあるけど、ほとんど知らない。
「ご、ゴメン、ちょっとわからない」
「はぁ、まったく、あんた何を考えているのよ。浄土真宗も知らないなんて。浄土真宗っていうのは、親鸞聖人が作った仏教の宗派の一つよ。あたしはね、本願寺派の浄土真宗のお坊さんを目指しているの」
「ふ~ん、そうなの。だから、お経を聴いていたんだね」
「そういうこと。これでも努力してるの。でもね、パパが許してくれないの」
「お父さんに反対されてるの?」
「そう。あたしの家ね、お寺なの。新潟市中央区にある、祐善寺(ゆうぜんじ)っていうね。なかなか規模は大きいの。檀家の数もまずまずあるし。立派なお寺なのよ」
「知立さんは後を継ごうとしているの?」
「そう。カンがいいわね。だけど、パパは反対してる。あ、パパじゃなくて師匠なんだけど」
「師匠?」
「ホント、あんたって無知なのね。それでよくこれまで生きてこれたわね。お坊さんになるにはね、師匠となる僧侶を見つけないとならないの。師僧っていうんだけどね」
「つまり、君のお父さんが師匠。お坊さんなわけか?」
「そう。だけどね、ダメなのよ。パパはあたしがお坊さんになるのを反対してるの」
 俺は、お坊さんについてあまり詳しない。
 イヤ、あまりどころかほとんど知らないのだ。
 だけど、なんとなくお坊さんの仕事がキツそうだっていうのはわかる。