あいつは軽い女なんだ......。
 と、美沙を卑下してみる。
 けど。
 そんなことしても虚しいだけだ。
 俺がじっと美沙を見ていると、彼女はその視線に気づいたようだった。
 だけど無視。
 プイと横を向いてしまったのである。
 本当にイヤになるよ。
 まったくね。

 放課後――。
 いつもなら、美沙と屋上に行き、そこで仏教の話をしていた。
 でも今日は違う。
 美沙は俺を迎えに来ない。
 一人でスタスタと帰ってしまった。
 俺が美沙を見送ると、その後に佐伯さんがやってきた。
「榊原君。一緒に帰りませんか?」
「一緒に? まぁいいけど......」
「よかった。そしたら、今日も万代に行って、お茶とかしましょう。ちょっと行ってみたいカフェがあるんです」
「うん。いいよ、行こうか」
 俺はそう言うしかなかった。
 何というか、救いを求めていたんだ。
 佐伯さんと一緒にいれば、きっと美沙のことを気にせずにいられる。
 そんな淡い期待があったんだよね。
 だけどね、事はそんなに簡単じゃなった。
 忘れるどころか、美沙が俺の心の中をどんどんと侵食していくのだ。
 辛い。
 切ない。
 苦しい。
 なんで人生ってこんなに辛いんだろう。
 ホント辛いことばっかりだよね。
 辛くて辛くて仕方ない。
 学校を出て、俺と佐伯さんは万代へ向かう。
 地方都市新潟。
 その繁華街である万代は今日も混んでいる。
 佐伯さんが行きたがっているカフェは、ファッションビルであるビルボードプレイスの中にあった。
 なかなか洒落たお店であって、高校生の俺たちには少し早いような気がしたよ。
 でも佐伯さんは行きたがっているんだから、ついて行ってあげよう。
 佐伯さんはコーヒーとパンケーキのセットを頼んだ。
 俺はそこまで空腹というわけじゃなったから、シンプルにアイスコーヒーのみを頼む。
 佐伯さんは、パンケーキを小さく切ると、それをフォークに刺して、顔を真っ赤にさせた。
「あ、あの、榊原君、よかった一口食べませんか?」
「え? いいの?? でも悪いよ」
「一緒に食べたいんです。だからよかったら食べてください」
 可愛い。
 正直そう思ってしまった。
 何というか、反応一つひとつが初々しいというか、清純なのだ。
 この子は本当にいい子だ。
 絶対に裏切っちゃダメだ。