俺のところに美沙がやってきた。
「榊原、ちょっと来て」
いつの間にか、呼び方が苗字に戻っている。
何か切ない。
「何?」
「いいから来て」
彼女はやはりいつも通り屋上に向かった。
屋上には誰もいない。
ひっそりとした空気が漂っている。
「契約を解除するわ」
と、屋上に着くなり、美沙はそう言った。
「契約? 何の話だ」
「だから、あんたを助手にするっていう契約よ」
「え。何でだよ。それに今日は親鸞聖人の言葉を書く日だぞ」
「もういいわ。あたし一人でできるから」
「パソコンやスマホ持ってないじゃん」
「そ、そうだけど、鈴奈さんは手書きでもいいって言ってくれたし」
「でも、何で急にそんなこと言うんだよ」
「だって......」
と、美沙は口を尖らせた。
彼女が何を考えているのか、俺にはわからない。
「だって、あんた、佐伯さんと付き合ってるんでしょ。なのにあたしに協力してたら、佐伯さんだっていい気はしないはずだし」
「違うよ、付き合ってないよ」
「でも、一緒にデートしてたじゃん」
「まぁ、それはそうだけど......、たまたま誘われただけで、ホントにそれだけなんだよ」「ふ~ん。じゃあ、あんたは、佐伯さんをどう思っているの?」
どう思ってる?
さて、俺はどう思ってるんだろう?
少なくとも悪い気持ちはしない。
けどさ、何かが違うんだよ。
俺は、すぐには答えられなかった。
その沈黙が、痛手になってしまう。
「好きなんじゃないの?」
「好きって俺が佐伯さんを?」
「そう」
「それは、その、よくわかんないよ。俺自身が驚いているくらいなんだから」
「でも、今日は一緒にお弁当食べてたし」
「だって作ってくれたから」
「とにかく、あんたはあたしといたらダメなのよ。浄土真宗の布教は、これからはあたし一人でするから」
この人は勝手だ。
勝手に巻き込んで。
勝手に捨てられて......。
俺は何かイライラしてしまった。
そして言ってしまったんだよね。
「そうかよ。ならもういいよ、勝手にしろ」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、美沙は寂しそうな顔を一瞬浮かべた。
だけどすぐに持ち直して、キッと俺を睨みつける。
「フン! あんたなんて別にいなくても大丈夫なんだから!」
そう言い残すと、彼女は屋上から消えていった。
あぁ。
なんだろう。
「榊原、ちょっと来て」
いつの間にか、呼び方が苗字に戻っている。
何か切ない。
「何?」
「いいから来て」
彼女はやはりいつも通り屋上に向かった。
屋上には誰もいない。
ひっそりとした空気が漂っている。
「契約を解除するわ」
と、屋上に着くなり、美沙はそう言った。
「契約? 何の話だ」
「だから、あんたを助手にするっていう契約よ」
「え。何でだよ。それに今日は親鸞聖人の言葉を書く日だぞ」
「もういいわ。あたし一人でできるから」
「パソコンやスマホ持ってないじゃん」
「そ、そうだけど、鈴奈さんは手書きでもいいって言ってくれたし」
「でも、何で急にそんなこと言うんだよ」
「だって......」
と、美沙は口を尖らせた。
彼女が何を考えているのか、俺にはわからない。
「だって、あんた、佐伯さんと付き合ってるんでしょ。なのにあたしに協力してたら、佐伯さんだっていい気はしないはずだし」
「違うよ、付き合ってないよ」
「でも、一緒にデートしてたじゃん」
「まぁ、それはそうだけど......、たまたま誘われただけで、ホントにそれだけなんだよ」「ふ~ん。じゃあ、あんたは、佐伯さんをどう思っているの?」
どう思ってる?
さて、俺はどう思ってるんだろう?
少なくとも悪い気持ちはしない。
けどさ、何かが違うんだよ。
俺は、すぐには答えられなかった。
その沈黙が、痛手になってしまう。
「好きなんじゃないの?」
「好きって俺が佐伯さんを?」
「そう」
「それは、その、よくわかんないよ。俺自身が驚いているくらいなんだから」
「でも、今日は一緒にお弁当食べてたし」
「だって作ってくれたから」
「とにかく、あんたはあたしといたらダメなのよ。浄土真宗の布教は、これからはあたし一人でするから」
この人は勝手だ。
勝手に巻き込んで。
勝手に捨てられて......。
俺は何かイライラしてしまった。
そして言ってしまったんだよね。
「そうかよ。ならもういいよ、勝手にしろ」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、美沙は寂しそうな顔を一瞬浮かべた。
だけどすぐに持ち直して、キッと俺を睨みつける。
「フン! あんたなんて別にいなくても大丈夫なんだから!」
そう言い残すと、彼女は屋上から消えていった。
あぁ。
なんだろう。

