けど......。
 目を閉じると、あの時の美沙の顔が蘇る。
 とても寂しそうな顔をしていた。
 あんな顔の美沙を見るのは、もしかすると初めてかもしれない。
 イヤ......。
 一度見ている。
 あれは確か、美沙が学校を休んだ前の日だ。
 あの時も、こんな風な顔をしていた。
 俺が何をしたというのだろう。
 美沙の気持ちがよくわからない。
 夜、佐伯さんから連絡がきて、俺たちはしばらく話をする。
 今日の映画の話。
 テレビの話。
 学校の話。
 色々話していくと、佐伯さんが最後に言ってきた。
「あの、榊原君って嫌いな食べ物とかありますか?」
「イヤないけど」
「そうですか、ならよかったです」
 何がよかったのかわからなかったけれど、俺たちはそのまま連絡を切った――。
 
 翌日――。
 佐伯さんが俺に嫌いな食べ物を聞いた理由が判明する。
 なんと、佐伯さんが俺にお弁当を作ってきたのだ。
 俺は、弁当を持ってきているんだけど、これは驚いた。
「よかったら一緒に食べませんか?」
 と、恥ずかしそうに佐伯さんは言った。
 俺は大抵一人で食事をしていたから、断る理由はない。
 チラと美沙を見つめる。
 すると、視線が交錯した。
 だけど美沙はプイと横を向き、どこかに行ってしまった。
 なぜだろう?
 どうして、俺は美沙を見たんだろう??
「榊原君、聞いてます?」
「あ、ゴメン、いいけど、俺弁当あるんだよね」
「そうですか、じゃあ、明日から私が作るんで、持ってこないでもいいですよ。今日は、食べなくてもいいんで」
「イヤ、もらうよ、せっかくだし、弁当二つくらい余裕で食べられるから」
 俺はそう言い佐伯さんと、食事をする。
 彼女の作ったお弁当は、俺の母さんが作るのとは全然違った。
 俺の母さんは、とにかくがさつだ。
 だから、汁っけのある食べ物を平気で弁当に入れるし、基本的に昨日の残り物だ。
 だけど、佐伯さんの弁当は手が込んでいる。
 卵焼きに、タコさんウインナー、唐揚げなどが入っている。
「これ、佐伯さんが作ったの?」
「はい、お料理も好きなんです」
「そうなんだ。でも朝から唐揚げを?」
「あ、唐揚げは昨日のうちに作りました。だから、もしかすると美味しくないかもです」
「そんなことないよ。ものすごく美味しそうだよ」
 俺がそう言うと佐伯さんは笑顔になった。