「ありがとう。じゃあ今度貸してもらおうかな。そういえば、佐伯さんは図書委員だよね? やっぱり本とか好きなの?」
「はい、好きです。色んな世界が見えるから。古典には古典の世界が見えますし、SFには未来の世界が見えます。だから楽しいんです」
 そういうもんかな。
 俺は、本を読まないけれど、少しだけ興味が湧いた。
「あの、今度学校で話かけてもいいですか?」
「え? あぁまぁいいけど」
「迷惑じゃないですか?」
「迷惑なんかじゃ」
「私、榊原君と仲良くなりたい。だから本も貸します。また、一緒に遊んでくださいね」
「うん」
 俺たちはそんな風にして話し合い、再びバスセンターに向かった。
 その時、俺は最悪の邂逅を果たすのだ。
 そう、美沙とバッタリ会ってしまうのである。

「あ、悠真、それに、佐伯さんも......」
「えっと、これはだな、その......」
 俺、慌てる。
 何というタイミングで会ってしまうのだろうか。
 俺が慌てていると、それを遮るように佐伯さんが言った。
「で、デートしてるんです」
 その言葉に、美沙の眉間がぴくっと動く。
「ふ、ふ~ん、あんた、恋人いたんだ」
 と、美沙の言葉が俺に刺さる。
「いや、俺たちは付き合ってるわけじゃないんだ。ただ、映画に一緒に来ただけで」
「そう。まぁいいわ。あたしも用事あるから、それじゃね」
 美沙はどこか寂しそうな顔をしている。
 どうして?
 なんでそんな顔するんだよ。
 美沙はそのまま去っていった。 
 何というか、後味の悪い空気が流れる。
「榊原君って、知立さんと付き合ってるの?」
「付き合ってないよ。ただ、少し話をするだけで」
「そうなんですか。なら、私にもチャンスありますよね?」
 と、ぼそりと佐伯さんは言った。
 チャンス......。
 やはり佐伯さんは俺のことが。
 これは傲慢だろうか?
 俺は今、女の子に好意を寄せられている。
 だけど、どうすればいいんだろう。
 誰でもいいよ。答えを教えてほしい。
 
 夕方――。
 俺たちはバスセンターで別れた。
 別れ際、佐伯さんは何度も俺にお礼を言っていた。
 確かにいい子なんだろうけど。
 そう、俺にはもったいないくらいのね。
 自宅の戻り、俺はベッドの上で横になった。
 どっと疲れが出た感じだ。
 今日はとにかく疲労した。
 このまま眠ってしまいたい。