「はい。だから、美沙さんと応援してあげてください。きっといいお坊さんになれると思います」
 その言葉は俺の正直な気持だった。
 美沙は一生懸命に勉強している。
 仏教というのは、常に修行の気持ちが必要だろう。 
 となると、その決意がある美沙にはピッタリなのだ。
「君は夢がないと言ったね」
「はい」
「私は昔、夢があったんだ」
「夢ですか?」
「そう、子どもの夢だけどね、野球選手になりたかったんだよ。それで、高校は強豪校へ行きたかった。だけど、先代がこの寺を継ぐのはお前しかいないって必死でね。行きたくもない宗教系の高校に進み、大学も仏教だ。気づけば、夢を追える立場にいなかった。お寺を継ぐ人がいないと、ここから出ていかないとならない。そうなると困る人がたくさんいる。だから私は嫌々ここを継いだんだ」
「そうなんですか」
「僧侶はね、それこそ老人になってからも目指せる。君は知らないかもしれないが、定年をすぎてから僧侶を目指す人が増えているんだ。でもね、若い頃にしか追えない夢もあるだろう。美沙にはもっと大きな視点を持ってもらいたい。今しかできない道を追ってもらいたいんだ」
 今しかできない道。
 それって何だろう?
 そもそも青春を謳歌するってことが、俺にはよくわからない。
 バンドでも組んで、魂の叫びを歌えばいいのだろうか?
「僕、僧侶の世界は知りません。でも、奥が深いんだと思います。そこに美沙さんは飛び込みたがっている。美沙さんにとって、僧侶は生きる全てみたいなものだから。応援してあげてください」
 生意気だろうか?
 怒られるかと思ったけれど、宋憲さんはにっこりと笑って、
「美沙はいい友達ができたみたいだな。美沙をよろしく頼むよ。悠真君。......ちょっと待っていたまえ。美沙を呼んでくるから」
「あ、ウォークマンさえ渡してもらえればそれでいいですから」
「そんなこと言わずに、美沙に会ってやってくれ、なんだか元気がないみたいだから。美沙を励ませるのは、どうやら私ではなく、君のような人間のようだからね」
 そう言い残すと、宋憲さんが消えっていった。
 しばらくすると、美沙が現れた。
 いつもは制服姿だけど、今日は私服だった。
 黒のショートパンツに、キャミソール、その上にざっくりとした薄手のカーディガンを羽織っている。
「どうして悠真がいるの?」