学校を終えて、俺は祐善寺に向かう。
 そもそも、俺はお寺になんていかない。
 せいぜい神社だ。
 俺たちが暮らす新潟市中央区には、白山神社という大きな神社があるのだ。
 年末年始になると、出店とかが出て、結構盛り上がるんだよね。
 俺も過去、初詣に何回か行っている。
 だけど、お寺なんて行かないよ。
 行く理由がないからね。
 それでも今日は違う。
 美沙の様子を見に行くのだ。
 それに、ウォークマンに正信念仏偈と和讃と呼ばれるお経を入れたから、それを渡さないとならない。
 毎日練習してるなら、このウォークマンがないと不便だろう。
 高校を出て、自転車で祐善寺へ向かう。
 新潟駅とは反対方向の住宅街の中にあるようだった。
 確か、規模がそれなりに大きいって言っていたよな。
 その言葉通り、祐善寺は立派なお寺だった。
 新潟市は、繁華街の万代や古町といった地区から少し離れると、すぐに寂れた風景が広がるようになる。
 そこは、繁華街が近いと思えないほど、自然が豊かな場所だった。
 小高い丘の上。
 そんな風に形容できるだろう。
 石の階段をのぼっていくと、やがて、大きな鐘が見えてくる。
 そして、その脇にお寺はあった。
 祐善寺。
 それが、今俺の前に広がっている。
 鐘の前では、作務衣を着た僧侶らしき人が掃き掃除をしている。
 壮年のおじさん。
 もしかすると、美沙のお父さんかな。
 おじさんは、俺の姿に気づいたようで、ニコッと笑みを浮かべた。
 こんな時、どんな顔をすればいいんだろう?
 よくわからないけど、俺は愛想笑いを浮かべた。
 そして、おじさんに近づき、
「あの、美沙さんいますか?」
 美沙という言葉を放った時、おじさんの眉間がぴくっと動いた。
「美沙に何か用なのかな?」
「はい。僕は美沙さんのクラスメイトで、榊原って言います。実は、美沙さんのウォークマンを届けに来たんです」
「ウォークマンを?」
「はい。お経のCDを入れてほしいって頼まれて。だけど、学校をしばらく休んだみたいでしたから、それで気になって」
「君には美沙の友達?」
 俺たち、友達なんだろうか?
 まぁ、よく話をするし、友達と言っても問題ないだろう。
「はい、友達です」
「そう。ふ~ん、なるほどねぇ。君が、悠真君か」
「あれ、僕、名前言ってませんけど」