俺は行ったことがないんだよね。
「一緒に帰ってもいいのか?」
「いいっているでしょ。イヤならいいけど」
「イヤじゃないよ。だけど、意外だな、美沙が俺を誘うなんて」
「あのねぇ、あんたあたしを何だと思ってるのよ」
「僧侶」
「まだ僧侶じゃないわ。得度していないもの」
「得度?」
「つまり、出家して、お坊さんになるっていう儀式」
「ふ~ん。まぁ、帰ろっか。今日は屋上に行かないんだろ?」
「うん。ちょっと行きたいところがあるの。ついて来て」
「わかった」
 そう言い、俺たちは二人で学校を出る。
 ただ、俺は自転車だ。
「なら、俺チャリだけど、美沙は?」
「あたしは歩き。じゃああんたは歩きなさい。自転車を引いてね。二人乗りはダメよ、危ないし、違反だから」
「わかってるよ、やっぱり真面目なんだな」
「当然のことを言ってるの」
「まぁいいか、歩こう、どっち?」
「駅に行きたいの」
「そうすると、大体十五分くらいか。まぁ行こう」
 俺たちはこうして歩き始めた。
 自転車に乗らず、自転車を押して歩くというのは、何だか不思議な感じだ。
 まぁ、疲れないからいいんだけど。
「駅で何をするんだ?」
「あんた、パン好き?」
「パン? 食パン??」
「食パンでもいいし、菓子パンでもいいわ」
「嫌いじゃないよ。最近あんまり食べないけど」
「美味しいパン屋があるの。そこにつれて行ってあげる」
「あ、うん」
 どうやらパン屋に行くらしい。
 駅まで十五分。
 いつもとは違う空気が流れたよ。

 駅――。
 駅前には駐輪場がある。
 そこに自転車を止めて、俺たちは駅の中に向かう。
 俺たちが暮らす街にある新潟駅は、新幹線も停まる大きな駅だ。内部には飲食店やら量販店やらが入っていて、結構栄えている。
 そんな中、美沙は駅の中に広がる飲食店街の中のパン屋に向かった。
『パンのカブト』
 それがパン屋の名前だった。
「今日はあたしがご馳走してあげる」
 と、美沙は言った。
 俺、結構慌てる。
「え、どうしてだよ? 払うよ、悪いし」
「いいの、CD録音してもらうから、そのお礼。特別なんだからね」
 美沙は頑なだったから、俺は素直にご馳走になった。
 美沙が買ったのは、「ゲンコツパン」というパンだ。
 それを買い、近くの公園に行き、二人で食べた。