「え? まぁあんたには言ってもいいか。但し他言は無用だからね」
「うん、俺、口は堅いから」
「実はこんな内容なの......」

『とつぜんのお手紙ごめんなさい。
 私は一年生の女子です。
 校内新聞の親鸞聖人の言葉を見て、私の悩みにも答えてもらえると思ってお手紙を書きました。
 実は私は恋をしています。
 校内にいるある男子が好きなのですが、そのことで悩みを抱えています。
 私は臆病なので、とてもではないですが、声はかけられません。
 ただ、遠くから見ているだけなのです。
 最初はそれでもいいと、思っていました。
 でも、どんどん好きという気持ちがあふれてきて、もう止まりません。
 勇気を出して声をかけようとしたのですが、私が好きな男子生徒は、他の女の子と仲がいいようです。
 休み時間や放課後になると、よく一緒に話しています。
 それを見てしまい、私は、声をかけるのを止めました。
 だって、その女の子は物凄く可愛いですし、私と全然違うタイプなんです。
 こんな時、どう動けばいいんでしょうか? 親鸞聖人なら何て言いますか?
 私は親鸞聖人に興味を持ち、少し調べました。
 そしたら、偉いお坊さんで、日本の偉大な思想家だとわかったのです。
 この親鸞聖人のお言葉を書いた人なら、私の悩みを解決してくれると思い、こうして手紙を書いた次第です。
 よろしくお願いします」

 手紙はそれで終わっていた。
 どうやら、恋の悩みらしい。
 恋か......。
 俺には荷が重すぎる問題だ。
 それに、仏教と恋は、全然違うような気がするよ。
「どう思う?」
 と、美沙は告げた。 
 どうすると言われても、俺も困る。
「さぁ、俺にはとてもじゃないけど、役に立てないよ。そもそも、恋したことないし」
「ふ~ん。この子は悩みの中いるわ。煩悩に取りつかれているいっても過言ではない」
 煩悩か......。
 人は誰だって煩悩を抱えているだろう。
 きっと美沙だって。
「美沙を信頼し、質問をくれたんだから、答えてあげた方がいいじゃない?」
「そうね」
 と、美沙は言った。
 そして、屋上から広がる空を見上げ、
「親鸞は妻帯者だった。知ってる?」
「妻帯者? つまり、奥さんがいたのか。まぁいいんじゃないの?」