プンスカ怒っている陽菜は、こうなると止まらない。
 ただ逃げるだけだ。
 俺は自室に引っ込み、ベッドの上に横になった。

 翌日――。
 朝学校に向かうと、既に美沙はやって来ていた。
 そして、俺の姿に気づくと、恥ずかしそうに俺のそばにやって来た。
「ねぇ、できた?」
 主語がない。
 しかし、俺は何となく言いたいことを察している。
「うん、正信念仏偈だっけ? とりあえず入れておいた」
「ホント? ありがと? でもどうやって入れたの? あんたCDとか持ってないでしょ?」
「あぁ、デジタルで買ったんだ。五百円くらいだから。まぁ出してやるよ。ウォークマン壊したの俺のせいかもしれないんだろ。だから」
「そんないいわよ。出す、いくら?」
「だからいいってサービスだよ」
「ダメよ。こういうのはしっかりしないとダメなの。とにかく払うから」
 こう言うと、美沙はテコでも動かない。
 ギャル風の容姿のクセに、この辺は真面目らしい。
 俺は素直に、正信念仏偈のダウンロードでかかった五百円を払ってもらった。
 まぁ、本当にどうでもよかったんだけど。
「ねぇ、これってCDの曲も入れられるの?」
「うん、入れられるよ」
「それも悠真に頼めばやってくれる?」
「まぁ、いいけど、何か入れたい曲があるのか?」
「うん。実はね、家に正信念仏偈と和讃のCDがあるからそれもいれてほしいの」
「いいよ、そのくらいやってやるよ。で、和讃ってなに?」
「あんた、ホントに無知ね」
「うるせー」
「いい? 和讃っていうのは、和語による仏教賛美の歌よ」
 そう言うと、美沙は呼吸を整えて、

「本願力にあひぬれば
むなしくすぐるひとぞなき
功徳の宝海みちみちて
煩悩の濁水へだてなし」

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 またわけのわからないことを言い出した。
「それってどういう意味?」
 と、俺は尋ねる。
 美沙は、ニコッと笑みを浮かべながら答えた。