俺たちは二人で新聞部に向かう。
 新聞部に向かうと、かなりたくさんの部員たちが忙しそうに作業していた。
 俺は、出版社の編集部ってよく知らないけど、こんな感じなのかな? って何となく思ったよ。
 俺たちが入ると、鈴奈さんが立ち上がり、手招きした。
「お、来たのね。えっと、確か......」
「榊原です」
「そう榊原君。それで、隣の子は?」
「私は知立美沙です。今日はよろしくお願いします」
 なんだ、この変身は?
 俺と全然態度が違う。
「こっちに来て、えっと、親鸞聖人の教えだよね? 一応編集後記の隣に載せようと思うんだけど」
 と、鈴奈さん。
 それを受けて知立さんも答える。
「ホントですか? 嬉しいです。それでいくつか候補を持ってきたんですけど、いいですか?」
「うん、言ってみて」
「例えばこんなのはどうですか?」
 知立さんは、真剣な声で言い始めた。

『無明長夜の灯炬なり 智眼くらしとかなしむな 生死大海の船筏なり 罪障おもしとなげかざれ』

 ?
 また、わけのわからない言葉だ。
 多分、鈴奈さんも同じことを考えているだろう。
 目がキョトンとしている。
「それ。どういう意味?」
 当然の疑問をはく鈴奈さん。
 すると、知立さんは嬉々としながら、
「えっと、これはですね。私たちは我欲にとらわれていますよね? そして、仏様のような智慧や慈悲も持っていない。でも心配しなくて大丈夫です。我欲に満ちた自分に気づいた時、私たちは暗闇の海を漂っている状態なんです。でも、阿弥陀さまの願いの船がやって来て、私たちを乗せて浄土に導いてくれる。......って意味です。つまり、我欲に気づけば、阿弥陀さまが救って下さるってことですね」
 俺は、ぼんやりと聞いていた。
 この子、ホントに親鸞聖人を崇拝しているんだなぁ。
 と、そんな風に思った。
 一瞬、時が止まったかのように静まり返る。
 忙しく動いていた部員たちも、皆知立さんの言葉を聞いていた。
 そんな中、鈴奈さんが口を開く。
「す、すごい」
「え?」