About a girl

 俺がそう尋ねると、瑞希は再び遠い目をした。
 何を考えているのかわからない。
 だけど、数秒後、俺は確実に彼女の想いを聞くだろう。
「う~ん、好きだよ。愛してると思う」
「俺も愛してる」
「だからこそ、健君には幸せになってもらいの」
「俺は幸せだよ」
「嘘だよ」
「嘘ってなんでそんなこと」
「消える人間と一緒になることが、私には幸せとは思えない。ねぇ、健君、やっぱりね、この世界って生きてる人間が優先なんだよ。死ぬ人間と一緒になっちゃいけないよ」
「嫌だよ、俺は決めたんだ、何があってもお前といると」
「まぁいいや、健君には何を言っても無駄みたいだし」
 瑞希は意味深にも笑みを浮かべた。
 だけどね、その笑みはどこか哀愁じみており、俺を驚かせた。
 何かこう、瑞希は俺と一緒に居たくないのではないか? そんな風に思えたよ。
 でもさ、俺は決めたんだ。
 何があっても瑞希と一緒に居ると。
 彼女が死ぬとか、消えるとか、そんなのは関係ない。重要なのは、愛する気持ちだよ。瑞希だって、きっと俺の気持ちがわかってくれるはずだ。
 それに確かに彼女は俺に向かって「愛してる」って言ったんだ。その言葉を信じるしかない。
 どんな人間にも平等に時は流れる。
 たとえ、善人であっても……。
 たとえ、悪人であっても……。
 俺たちに残された時間は、あまりにも短いよね。だけど、残された時間をただ生きるしかないんだよ。それは事実だと思う。

 翌日――。
 瑞希は無事退院した。
 午前中には退院でき、俺たちは新幹線に乗り、新潟へ向かう。浦佐から新潟までは新幹線で四十分くらい。この時間さえ惜しい。
 相変わらず瑞希は冷静だ。
 今日、彼女は死ぬというのにね。
「高校の時以来だよね?」
 新幹線の席で瑞希はそんな風に言った。
 閑散期であるため、新幹線の中はほどんど人が入っていなかったよ。
「うん、そうだな。確か、高校の時は突然行ったんだよ」
「そう。覚えてるよ。変わってるかな? マリンピア日本海は?」
「わかんない。俺も全く行っていないから」
「そっか。まぁ行ってみればわかるよね」
「その通りだ」
 新潟駅に着いたのは、正午だった。
 そこからバスでマリンピア日本海へ向かう。この流れは、高校時代と同じである。青春時代の思い出が蘇り、俺は懐かしくなる。
「新潟駅も大分変ったんだね」