About a girl

 高津区役所に行き、戸籍謄本を持ち、浦佐に戻った時は、既に夕方だった。となると、瑞希の戸籍謄本を取りに行くのは、必然的に翌日になる。今は、一分でも時間が惜しいのに……、だが仕方ないよね。
 代理人が、戸籍謄本を取りに行く場合は、印鑑、委任状、代理人の本人確認書類が必要になる。
 俺は瑞希から委任状を書いてもらい、準備を進める。瑞希は、あまり乗り気ではなかったようだったけれど、俺が押し切って何とか書いてもらったよ。
 こうして少しずつ準備を進めた。
 ただ、今日は金曜日。
 土日は役所がやっていないから、実際に新潟市に戸籍謄本を取りに行くのは月曜になりそうだった。
 歯痒い時間だったよ。
 だけどね、俺は瑞希のそばに居て、彼女と話し続けたんだ。彼女いられる時間は、もう残り少ない。後悔したくないんだ。できることは、すべてしてあげたい。そんな風に思ったよ。
 日曜日――。
 俺がいつも通り、病院に向かうと、廊下で瑞希の母親に会ったんだ。
「健一君、今日も早いのね」
「いえ」
「少しいいかしら?」
「はい、構いません」
 俺たちは病院のロビーで少し話をすることに……。
「健一君には本当に感謝してるわ。ほら、瑞希って孤独でしょ? だから、私たち両親以外、誰もお見舞いに来ないの」
「そうなんですか」
「大学を辞めてね。それから一気に塞ぎ込みになったっていうか。自分の殻に閉じ籠っちゃったの」
「俺が悪いのかもしれません。大学時代、彼女が辞めるのを引き留められなかったから」
「健一君は、瑞希とお付き合いしていたでしょう。それが急に別れたって瑞希が言うから心配してたの」
「すみません。本当はもっと早く会いたかったんですけど怖かったんです」
「そう」
「でも、今は彼女とずっと一緒に居たい。そう思っています」
「そう言ってくれると嬉しいわ。瑞希を宜しくね」
「はい。もちろんです。あ、あの、今度お父さんにも会って話したいことが」
 話したいこと。
 それはもちろん、結婚についてだ。
 やはり、瑞希の父親の承諾を得ておく必要があるだろう。
「今日、お父さんも来るから、その時話をするといいわ。お父さんも健一君を気に入ってるから」
「ありがとうございます」