「無理だよ。私はね、超能力の弊害で死ぬの。でもさ、そんなこと言っても誰も信じてくれないよ。これは宿命なのよ。だからね、イイの。私は、ここでじっとしてる」
　瑞希がどうして、ここまで冷静いられるのかわからないよ。だってさ、残された命は本当に極僅かなんだよ。それなのに……、どうしてここまで落ち着いていられるんだろう？　それが不思議でならなかったんだ。
「瑞希、それでいいのか？」
「うん、私はいいよ」
　瑞希がここまで言っている。
　なら、俺はそれに従うしかないのだろう？　病院からもう一度抜け出そうとするためには、やはり、瑞希の協力が必要になる。けれど、本人である瑞希が、これでいいと言っているのだ。協力は望めないだろう。
「とりあえず、退院するまで毎日来るからな」
「そんな、いいのに。ホテル代だって高いでしょ？」
「そんなこと気にするなよ。俺は瑞希と一緒に居たいんだ」
「健君……。まぁ、好きにすればいいけど」
　とはいってものの、俺はある行動をする必要があるのだ。
　行動――。
　それは、瑞希と結婚することだ。
　そのためには、婚姻届けが必要になる。
　正直、俺はこれまで全く結婚なんて気にしてこなかったから、どうしていいのかわからなかった。
　だけどね、今はネット社会だ。
　大抵の情報は、スマートフォンがあれば、調べることができるよね？　俺はサクッと婚姻届けについて調べて、結婚するための準備を始めたんだ。
　婚姻届けはね。基本的にどこの役所でもらえる。俺は今神奈川県で暮らしているけれど、婚姻届けをもらうために、わざわざ神奈川まで行く必要はない。
　俺は今、南魚沼市というところにいる。
　そして、浦佐地区は大和省庁というところが役所になっているみたいだった。
　大和省庁は、俺が泊ってるホテルからも近い。徒歩で行けるから、俺は開いた時間を見計らって、その役所に行ったんだ。そして、そこの住民課へ行くと、戸籍が確認できる部署がある。まぁ受付で「婚姻届けを下さい」と言えば、大抵の場合は案内されるようだ。俺の場合はそうだったよ。
　そして、俺は無事に婚姻届けを手に入れる。一応予備にもう一枚貰い、それを持って瑞希の病室へ戻る。
　すると、病室には瑞希の母親が来ていて、二人で話をしていた。邪魔だったかな？　そう思ったけれど、母親は気さくに俺を迎え入れてくれたんだ。