About a girl

 俺には、それがよくわからないよ。
 だけどね、俺は確かに瑞希を愛している。それだけは確かだよ。今までは、恋愛感情というか、好きの延長線上だったような気がするよ。それでも、今俺は確かに彼女を愛している。絶対にね。
 そうなると、愛ってものが猛烈に気になるよ。愛してるからできること……。それがあるはずなんだ。
 夜、瑞希から連絡があった。
 病院のロビーからかけているらしい。
「健君、今日はありがとう」
「明日、マリンピア日本海に行くからな」
「そうだね」
「他に何かしたいことがあるか?」
「う~ん、何だろ。よくわかんないや。あのね、私も健君が好きなの。大学時代、健君と別れたけれど、あの時もずっと好きだった」
「俺もだよ。お互い若かったから、ああするしかなかったんだ」
「もしも、あのまま付き合っていたら、どうなってた?」
「一緒に居て、そのまま結婚したかもな……、否、したはずだよ」
「結婚か……、夢のようだね」
「俺はお前と結婚したいよ」
「もう無理だよ」
「たとえ後十日しかなくても。瑞希結婚しよう」
「ダメだよ、別れるのが辛くなる」
「で、でも……俺はお前を愛してるんだ」
「私を愛してる……」 
 瑞希はそんな風に繰り返した。
 その声は、どこか震えており、俺をドキッとさせる。
 やがて、瑞希はしくしく泣き始めたよ。
「えっく、ひっく、健君、私も愛してる……。健君のこと……」
「なら、結婚しよう。明日、婚姻届けを出すんだ。そうすれば、晴れて俺たちは夫婦だよ」
「私、奥さんなのに、何もできないよ。死んじゃうんだよ」
「それでもいい、俺はお前と結婚したい」
 俺は必死だった。
 結婚指輪とかはない。
 だけど、そんなものは関係ない。大切なのは、お互いの気持ちだ。結婚したいという気持ち……。この人と一緒になりたいという気持ち。
 それが膨れ上がって、ある一定のレベルを超えると、愛に変わるんだ。
 それにね、愛ってやつはきっと……、
『その人の全てを受け入れる』
 だよね。
 たとえ瑞希が罪を犯したとしても、俺はそれを受け入れる。そして、二人より添って生きていく。何があっても彼女を許し、守っていく。愛っていうのはね、無償なんだよ。
 何か目的があって語るものではない。