About a girl

 それだけ、俺と瑞希は密接に繋がっている。だけどね、その運命の赤い糸は、ここで切れてしまうみたいだ。
 瑞希は後十日で死ぬ。
 ならば、俺に何ができるんだろう?
 死んでいく瑞希を前にして、俺はどう行動すればいいんだろう?
 やがて、再び煙のように上条さんが現れた。もう信じるしかない。彼は本当に悪魔なんだ。恐らく、瑞希に[接続]の力を与え、その見返りに命を頂く。酷い話だよね。
 だって、あの時瑞希はギリギリの状態だったんだよ。イジメられて、そんな中俺と付き合って、それでもイジメが酷くなって、心はズタズタにされたんだよ。思春期の心は、それこそこんにゃくのように柔らかい。ふにゃふにゃしているから、傷がつきやすいんだ。
 その繊細な時期に、彼女は徹底的に虐げられた。心に大きな傷を負っただろう。そして、その傷を負わせたのは、スクールカーストの上位に位置する橘花恵だ。彼女は俺を手に入れるために、瑞希をイジメたんだよね。まったく酷い女だよ。
 だからね、彼女が恨まれても文句は言えないよ。それだけのことをしたんだからね。あの時の瑞希の下した選択は、不可抗力だ。苦しみのあまり、橘花の死を念じた。その時、偶然にも上条さんが現れて、[接続]の力を与えたんだ。そして、その力を使って、彼女は人を殺した。
 これは、許される行為ではないかもしれない。だけどね、俺は許したいよ。抱きしめて、許してあげたい。きっと、俺が言ってることは愚かだろう。加害者を庇うなんて、どう考えても頭がおかしいよね?
 でもさ、俺はそれだけ瑞希が大切なんだよ。だから、俺は彼女の全てを受け入れたい。そうしないと、自分が保てないような気がしたんだ。
「これでいいかね? 桐生君……」
「ホントに悪魔なんですね」
「そう。その通りだ」
「わかりました。もう信じるしかないでしょう。でも、その前に……」
 俺は上条さんの前に進み、拳を振り上げた。そして、力任せに拳を振るう。相手が悪魔なら、きっと容易に交わせただろう。しかし、上条さんはよけなかった。ただ、俺の拳を顔面で受けて、よろりとよろめいた。
「殴っても、殴っても足りない。もう、俺の前から消えてください。俺は、あんたを殺したいほど憎いんです」
「わかるよ。その気持ち……。痛いほどね」
「消えてください。俺の理性がまだある前に」