About a girl

 最初に口を開いたのは、上条さんだった。
「驚いたかね?」
「驚きますよ。それにまだ信じられない」
「それはそうだろうね。私は本来、あまり人前には出ないからね。でも、瑞希さんと君の関係に興味を持ち、こうやって君に接触したんだよ」
「あなたが、瑞希に[接続]の力を与えたんですか?」
「その通りだ」
「では、本当に瑞希は死ぬんですか?」
 ……。
 暫しの沈黙が流れた。
 やけに重苦しい空気が、辺りを包み込んでいく。
「死ぬよ」
 絶望的な一言。
 それを、あっさりと上条さんは言ったんだ。
 嘘だろ!! 信じられない。
「何かの冗談ですか?」
「冗談ではない、事実だ」
「ど、どうして、どうしてですか? 折角、また瑞希と会えたのに、どうして彼女は死んじゃうんですか?」
「それが……[接続]の条件。能力を得る人間は、生命エネルギーを力に変える。つまりね、悪魔である私に、力を注ぎ、その結果超能力を得る。彼女の寿命は百歳。そして、彼女は二度力を使った。瑞希さんも言っていたが、そうなると、残りの命は半分の半分になる。つまり、二十五歳で死ぬ」
 瑞希の誕生日は、十日後に迫っていた。となると、瑞希の余命は十日なのか?
「瑞希は二十五歳の誕生日に死ぬんですか?」
「そうだ。つまり、残り十日の命だ。だからね、私は君を彼女の引き合わせた。君だって、後悔したくないだろう。永遠に別れる前に。君たちはもう一度会うべきだと、私は察した」
「あんたが彼女に力を与えなければ、こんなことにはならなかった。なぜあんな力を?」
「彼女が望んだから。私はその願いを聞いたに過ぎない」
 殴りたい衝動が沸々と湧きたってくる。 
 ここまで聞くと、自分を押さえられない。
「瑞希が助かる方法は?」
「ない。彼女は確実に十日後に死ぬ」
「まさか事故で?」
「否、心臓を止める。この世界の言葉を使えば、心臓麻痺になるかな」
「そ、そんなこと、俺はあんたを許せない! 自分を押さえられないんです!!」
「健一君。すまない……」
 桐生さんは、俺に向かって頭を下げた。
 その姿は、全く悪魔には見えない。ただ、俺は動揺したよ。だってさ、俺はこの人を憎んでいる。最後まで悪魔らしくいてくれよ。
「どうして、上条さんが謝るんですか?」
「君は、私が憎いだろう……」
「あなたは一体……。一体何者なんですか? 本当に悪魔なんですか?」