About a girl

 俺はここで、会社の上司である上条さんの言葉を思い出したんだ。
 確か、彼も言っていたよね。
 超能力には誓約みたいなものがあると……。つまり、何か条件がある。もしかして、それが『死』と繋がっているのだろうか?
「私の持つ[接続]の力は、自分の寿命を半分にするの。それでね、私は能力を二回使っている。だから、寿命は半分の半分。仮に、百歳まで生きるとすると、半分の半分だから、二十五歳までしか生きられないの」
「馬鹿な! そんなの嘘だ」
「嘘じゃないよ」
「でも、どうしてそんなこと知ってるんだよ? あの時は何も言ってなかったじゃないか」
「言えなかったの。でもね、私はこの力を手にした時、確かに条件を聞いたの」
「条件を聞いた? 誰に?」
「悪魔に……」
 悪魔……。
 あぁ、頭が痛くなるよ。
 瑞希は一体何を言ってるのだろうか? 超能力の次は悪魔。まさに混乱の極みだ。それに、悪魔なんていないよ。そんなものは、人間が作り出した幻想だ。そうに決まってる。
「証拠はあるのか?」
「証拠って?」
「例えば、その悪魔には、俺も会えるのか?」
 そこまで言うと、瑞希は暫し考え込んだ。
 仮に悪魔がいるのなら、俺に会わせるのが一番手っ取り早い。仮に、本当に悪魔に会えば、信じざるを得なくなる。
 さぁ瑞希、どう反応するんだ?
「悪魔、見たいの?」
「あぁ、そうすれば信じてもいい」
「いいよ。悪魔を見せてあげる。健君にはそれができるから」
「俺にはできる?」
「そう。健君はある条件があって、悪魔が見えるのよ。だから今、呼んであげる」
「ある条件?」
「そう。能力を得た人間と性的に交わると、交わった人間にも悪魔が見えるの……。私たちはセックスしてるから、健君には悪魔が見えるんだよ」
 瑞希は淡々と告げた。
 それは、どこまでも不穏な響きがある。本当に悪魔がいる? 嘘だろ??
「出てきていいよ……」
 と、瑞希が告げた。
 すると、今まで何もなかった窓辺が、急に変な渦みたいなものに包まれて、変化し始めた。それはね、まさに不思議だったよ。不可思議な光景だったんだ。
「初めましてじゃないよね? 桐生君……」
 窓辺にある人間が現れた。
 俺はその姿を見て、開いた口が塞がらなかったよ。
 なぜなら、今俺の目の前に立っているのは、他でもない、会社の上司である上条さんだったんだから。