About a girl

 瑞希の病室は、八畳くらいのやや広い空間だった。中央にベッドがあり、入り口の対面に窓がある。後はベッド脇に小さな棚があり、さらにテレビがあるようだった。
 俺が病室に入ると、瑞希は酷く驚いた顔をしていた。少し痩せていたけれど、そこには瑞希がいたんだ。俺は、思わず感動して、泣きそうになってしまったよ。
「け、健君……」
「そうだよ、健一だ。何て言えばいいんだろう? 久しぶりだな」
「どうしてここに?」
「ちょっと話は長くなるんだけど」
 俺はそこでここまでに至る経緯を説明したんだ。瑞希はじっと聞いており、時折相槌を打っていた。
「健君、探偵さんになったんだ」
「うん」
「探偵って忙しい?」
「忙しいよ。それに地味だ」
「そう。私とは違うんだね。私はダメなの」
「ダメって何が? 今は体調が悪いんだろ?」
「私のこと、どこまで知ってるの? お母さんに詳しく聞いた?」
「否、急いでたから、そこまで詳しくは聞いてないんだ」
「私ね、大学を辞めてから、しばらくして浦佐にやってきたの。最初は何もする気が起きなくて、引きこもりみたいになってたんだ」
「そうなのか? それでどうなったんだ」
「うん。後は時折バイトしたりして生活してきたって感じかな。だから、健君とは全然違う人生を歩んでいると思うよ」
「体調って何が悪いんだ? あ、あの、聞いてもいいかな?」
「健君。これは誰にも話していないんだけど、健君だから特別に話すよ」
 瑞希には、まだ俺に話していない何かがあるらしい。一体それは何か? 激しく気になるよね。俺が軽く頷くと、瑞希はいたく神妙な顔つきになったんだ。
 この顔は、遠い昔に見たことがる。
 そう、彼女が俺に超能力を告白した時だ。あの時も、確かこんな風な顔をしていたような気がするよ。
「私ね、もうすぐ死ぬの」
「は?」
 それは俺の脳天を確実に貫くほどの衝撃だった。
 瑞希が死ぬ?
 何故??
「何言ってんだよ? 瑞希の病気って精神の問題じゃないのか? どこか身体が悪いのか?」
「ううん。身体は普通だよ。それに、確かに今は精神の病気で入院してるの。だけど、それは関係ないのよ」
「じゃあ、どうして死ぬなんて言うんだよ? おかしいじゃないか」
「[接続]。覚えてるよね? 健君??」
「うん。瑞希が持つ、超能力のことだろ。忘れるわけないよ」
「超能力はね、ただでは使えないの」